―ピピピピ
リビングに戻るとスマホが鳴っている。同期入社の章二からの電話だ。
章二は自称・モテ男で、明るくてポジディブな性格ゆえに、同僚や上司からの信頼も厚い。違う部署だが、転職後の研修で同じだったから今でもよく会っている。
「お疲れー、そろそろ飯でも行こうぜ。そういえばスミレちゃんとは最近どう」
そういえばスミレと出会った食事会も彼がセッティングしたんだった。
「いやぁ、それが最近LINEでのトークのネタがつきてきて。章二だったらこんな時、どうしてる?」
「遠距離だと、いい感じのバーに連れて行って口説くなんてことできないから難しいよな。んーそうだな。俺だったらその子の趣味を聞いて、その中でも自分が今まで興味なかったことにあえてチャレンジしてみて、それをネタに会話してみるかな」
共通の趣味で盛り上がる、とはよく聞くが、あえて未知の領域に挑戦してみることも楽しそうだ。
ースミレちゃんの趣味はキャンプとかドライブ、このあたりは俺も好きだな。
「なるほどな。やったことのないことか…。うーん、料理かな…」
「料理!いいね。俺、料理はまあまあ詳しいよ。どうせ明日暇だろ、手伝ってやるよ」
章二は一方的にまくしたてると、じゃあまた明日!と言って電話を切った。
◆
ソファーでゴロゴロしながらNetflixを観ているとあっという間に部屋は暗くなっていた。部屋の電気を点けようと立ち上がると、お腹がぎゅるぎゅると音をたてる。
ー外に出るのは面倒だな。夕食はUber Eatsで頼もう。
和食、中華、ハンバーガー、あれこれ迷いながら画面をスクロールする。結局、いつも頼んでいる渋谷にある激辛麻婆豆腐を注文した。
デリバリーを待つ間、スミレに料理をはじめることをLINEで報告した。土日も多忙なスミレにしては珍しく、すぐに既読が付き返信が来た。
「良かったら、私のインスタ見てみて」
教えられたインスタを開くと、日常の写真に混ざって色とりどりの料理の写真が並んでいた。
ーすごい、お店みたいなクオリティだな。
料理ももちろん美しいが、料理のジャンルに合わせて食器の種類も変えている。
和食には素朴な焼き物で、イタリアンには生き生きとしたカラフルな食器。主張は強くないが、自分のこだわりを持っているスミレの人柄が出ているような気がした。
この記事へのコメント
遠距離恋愛も、お料理に目覚める男子もとても新鮮。
結婚が目的の女性や、クズ男の話はもう読み飽きちゃったから、この連載楽しくなりそう。
そう、料理って始めたらハマります、そして続けていくと確実に腕も技術も味付けもうまくなります。料理男子歴20年近い僕が保証します(勿論続けていければ、の話ですが)。
だから是非頑張ってほしい。
おこもり生活を楽しめるような知恵もあれば真似したいです。
にしても、話の本筋ではない煽り系見出し、ワンパターンではありますが、だんだん東カレ編集者の才能に見えてきました(笑)