男が、気になる女性から「いつもと違うね…」と思わせぶりなことを言われた理由
美優紀から明かされる、魔法の一手とは?
美優紀が社内恋愛を実らせ、結婚したのは3年前。彼女のファンは多く、社内でもニュースになったものだ。
その、経営企画部に勤める旦那さんこそが…
「ご主人、いつもオシャレです。こなれた大人の雰囲気があって、良い意味でのゆるさもあって。仕事忙しいのに、季節ごとに買いに行かれてるんですよね?美優紀さんが選んであげてるんですか?」
「ううん、自分で行ってるわよ。なんか信頼できるスタイリストさんがいて、色々アドバイスもらえるって。この前も7階がリフレッシュオープンしたとかで、行ってたわ」
「教えてもらえませんか!どこで買ってるんですか!?」
最新トレンドから出遅れた自分が、今からキャッチアップするには時間が無さ過ぎる。
困ったら”真似ろ”だ。
「…伊勢丹メンズ館よ」
ー伊勢丹パワーでいつも素敵でいるのか…。
”いつも”。そう、お洒落は『継続性』だ。今回の問題は、1回買い溜めて終わり、という訳にはいかない。忙しい中で、どう「いつもお洒落」でいられるか。
百貨店なら、短い時間で最新のトレンド商品が一気に見られるし、伊勢丹新宿店メンズ館はその名の通り「男性専門百貨店」だ。品揃えのレベルが違う。しかも美優紀さんによると、どうやら「スタイリスト」なる人もいるらしい。
新宿ならオフィスからも家からも30分程度。美味しいお店が並ぶ新宿三丁目は、会食に使うことも多い。飲む前に行くことだってできる。
ーその手があったか。
時計を見た慶介は、美優紀に別れを告げ、さっそく伊勢丹新宿店メンズ館に向かったのであった。
◆
ーあれ?
少し肩身を狭く感じながら、金融スーツのまま”お洒落の総本山”に足を踏み入れた慶介に、違和感が芽生える。
百貨店ならではの高級感に圧倒されつつも、なんというか、”和らぐ”のだ。
コミュニケーションスペースで賑わう1階。個性溢れるアート作品群。そして堅苦しくなく、洗練された明るい店員さんたち。
まずは美優紀のアドバイスに従って7階でエスカレーターを降りる。
―これならいける…!
眼前に広がる上質な服たちが、自分がどうなるかの想像を掻き立ててくれる。まずは一周だ。
思わず近寄った上質なジャケットに触れていた慶介の手が、ピタっと止まる。
―ちょっと待てよ?
いまの自分が”いい”と思うもので決めていいのだろうか…
しかし、拾う神はいる。出会いは、行動から始まるのだ。
「あの…」
女性の声がする。
その時、慶介がこれから長く”お付き合い”することになる出会いが待っていたのだった。