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恋愛依存症 Vol.1

恋愛依存症:男にチヤホヤされるのは交際前まで。31歳のあざとい童顔美女が、2週間で捨てられる理由

『絵麻ちゃん、今日はパパが迎えに行くって。あざみ野何時着?』

仕事中にママからLINEが入り、今日はパパの誕生日だと気づいて、到着時間を知らせた。

日頃から、仕事は残業しないと決めているし、絶対に定時に帰れるよう仕事の量も調整している。私の人生にとって、あくまで仕事は二の次なのだ。

『あざみ野うかい亭』の2階でお庭を眺めながらデザートを食べ、頭の中では、明日のデートで彼氏と会う服のコーディネートを完成させていた。

するとパパが、不意に問いかけた。


「来年はオリンピックイヤーだし、絵麻も結婚しちゃうかもなぁ。いい人いるんだろ?」

返答に困り、笑ってとぼけた。確かに今彼氏はいるが、付き合ってまだ2週間だ。

「そうよ、絵麻ちゃん。素敵な彼がいるなら会わせてちょうだい」
「どんな人なんだ?絵麻みたいな美人さんなら、選びたい放題だろう?」

パパの親バカ発言を受け流しながら、その場から逃げ出したい気分だった。

確かに私は、自分で言うのもなんだけど、かなりモテる。食事会では一番人気、会社にもファンは多いし、狙った男性はこれまでかならず落としてきた。

だけどー。

それもあくまで「交際前」まで。

実は、大人になってから3ヶ月以上続いた彼氏がいないのだ。ひどいときは2週間で別れてしまうパターンもあるだなんて、親にはとてもじゃないけど言えない。

…そしてその原因は、自分でもわかっていた。

そのとき、ふとスマホを見ると、彼から連絡が入っていた。

『エマちゃん、明日楽しみだね☺️恵比寿のお店、20時に予約してるから仕事終わったら連絡して』



翌日、私は予約した店ではなく、彼氏のマンションに向かっていた。

パーソナルジムの経営をしている彼氏・倫也の家は、渋谷区東にある。近くのコンビニで彼の好きそうなアイスと、自分用の缶ビールを数本買い、合鍵で部屋に入った。

付き合ってすぐ鍵を渡すことはないと言っていた倫也。だが、そんな彼におねだりしてなんとか手に入れたのだ。

合鍵を取り出すと冷んやりしていて、それが私をとてつもなく安心させた。

部屋に行くことは伝えていないけれど、たまっている洗濯と掃除をしてあげたら、絶対喜ぶに違いない。嬉しそうな彼の顔を想像するだけで幸せだった。

ビールを入れるために冷蔵庫を開けると、いつかのコンビニ弁当がそのまま押しこまれている。それらを処分したり整理していた私は、上の段に高級チョコレートが紙袋のまま入っているのに気がついた。

−もしかして、私へのサプライズギフトだったりして?

浮かれ気味で中身を見て、愕然とした。

『いつもありがとう』という女の子の可愛い字のメモが入っている。そしてその贈り主の名前は、彼の元カノの名前と一致したのだ。

私は冷蔵庫の中のビールを一気に飲み干すと、勢い任せに倫也に電話をかける。だが、彼は応答しなかった。

何度かけても出ないので、だんだん感情が抑えきれなくなってくる。

チョコレートを勝手に取り出すと、包装紙をビリビリに破いて、紙袋を床に投げつけた。最後に、元カノのメモをテーブルの目のつくところに置いた。

倫也は私と付き合いながら、前の彼女とまだ会っていたのだ。恐らく体の関係もあることは簡単に推測できる。

私は何かに取り憑かれたようにスマホを握りしめ、彼のFacebookページから、元カノの名前を探していく。

どのくらい時間が経っただろうか。ガチャリと鍵を開ける音がして、倫也が帰ってきた。

「エマちゃん!?なんでいるの?」

いるはずのない私の姿にぎょっとした後で、床に散らばったチョコレートの包装紙や紙袋を見て、口をポカンと開けている。

「え…?なんかあったの?」

そう言いながら部屋を見渡し、テーブルのメモを見て、全てを察したらしい。倫也の顔色はサッと青くなったように見えた。

「エマちゃん、ちょっと落ち着いて話をしようか。ほら、コーヒーでも入れるから…」

慌てて私をソファに座らせて、機嫌をとりはじめた。しかしポケットに入っていたスマホを何気なく見て、ようやく私からの20回以上の着信に気づいたようだ。

倫也の顔は、引きつっていた。

「ねぇ!これって、元カノの名前だよね?まだ彼女と切れてなかったってこと!?」

「いや、確かに元カノなんだけど、今は完全に友達だし、絵麻の心配するようなことはないってば…」

彼は私を必死でなだめようとしている。だが、私は勢いよくまくし立てた。

「友達だなんて、嘘をつくならもう少しマシな嘘にしなさいよ!私を失いたくないなら、そんな顔してないで言うことがあるんじゃないの?」

すると彼は、深いため息をついてから、こう言った。

「ごめん…俺、ちょっとこういうの無理だわ」

「…え?」

「元カノっていっても、高校時代に付き合ってた子で、今は本当に友達なんだよ。

あのさ、付き合って1週間で合鍵ねだられた時から、うすうす気づいてたけどさ…。エマちゃんちょっとヤバイよ。俺もう付き合いきれないわ。お店はキャンセルしとくから、帰って」

なかば追い出されるような形で、彼のマンションを出た私は、はたと気づいた。

ーもしかして私…。またやっちゃった…?

そう、私の恋愛が続かない理由は、恋人に依存しすぎて、重いと言われ逃げられてしまうから。

大学生の時から何も変わっていない。

良かれと思ってやった行動が全部裏目に出て、最後はいつも暴走し、自爆する。そしてそれは、自分でも止められないのだ。


▶Next:3月7日 土曜更新予定
会社の同僚に誘われた食事会で、新たな出会いが…。

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※本記事に掲載されている価格は、原則として消費税抜きの表示であり、記事配信時点でのものです。



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この記事へのコメント

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No Name
恋愛依存とかじゃなくて、普通に怖いよ。
距離感おかしい。
2020/02/29 05:2499+Comment Icon14
No Name
常軌を逸してます。
2020/02/29 05:1499+Comment Icon3
No Name
31にもなってパパ、ママw
親も娘をちゃんづけで呼ぶw
2020/02/29 05:3061Comment Icon13
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恋愛依存症

童顔で可愛いルックスと、明るく物怖じしないキャラクター。男を振り回す天性のあざとさから、寄ってくる男はよりどりみどり。

ただし、それも交際前までー。

付き合う前はモテるのに、交際期間は最長3ヶ月。恋愛が全く続かない女。31歳の絵麻(えま)も、そんなうちの一人だ。

なぜなら彼女は、いわゆる「恋愛依存症」の女。重すぎて、いつも男に逃げられてしまう彼女が、幸せを掴む方法とは?

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