童顔で可愛いルックスと、明るく物怖じしないキャラクター。男を振り回す天性のあざとさから、寄ってくる男はよりどりみどり。
ただし、それも交際前までー。
付き合う前はモテるのに、交際期間は最長3ヶ月。恋愛が全く続かない女。31歳の絵麻(えま)も、そんなうちの一人だ。
なぜなら彼女は、いわゆる「恋愛依存症」の女。重すぎて、いつも男に逃げられてしまう彼女が、幸せを掴む方法とは?
ー2010年2月
「絵麻、そのニットってアプの新作?超可愛いね」
親友の篠崎レイナにエスカレーターの下から声をかけられ、くるりと体を向ける。
授業終わりにプランタン銀座を上の階から順に見て、最後に2階のアンジェリーナのモンブランを食べる。これが私たちの定番コースだ。
「あー!ようやく卒業まで2ヶ月切ったね!早く社会に出て働きたい。うちの大学は短大もあるのに、親が大学にしてっていうからそうしたけど、やっぱり4年間は長かったな〜」
季節のモンブランをひとくち食べてからため息と共につぶやくと、レイナも「うちも似たようなもん」と頷いて、紅茶のカップを口に運んだ。
大学受験をする気はなかったから、自分のレベルで入れる女子大に指定校推薦で入ったのだが、その選択は正しかったと思っている。
私の頭じゃ、必死に勉強したところでたかがしれている。だから、無理して一般入試で共学を受ける気はさらさらなかった。
私が入った女子大は、就職にもそこそこ有利だし、それに自分にはルックスという最強の武器もある。そのおかげで、無事に大企業の内定をもらえた。
恋も就職も、顔が可愛い方が得。もはや誰も口には出さない暗黙の了解だ。
それなのに、恋の方がちっともうまくいかない。
携帯を見ると、午前中彼氏に送ったメールの返事は、まだ来ていなかった。
電話も朝から10回は掛けているのに折り返しもない。今日は授業がないことは知っている。ということは、酔いつぶれてでもいるのだろうか。
「私、彼と三越で待ち合わせてるからもう出るけど、絵麻は?」
レイナの彼氏は、中小企業の社長をしている。どんなに忙しくてもレイナのために時間を作る、という愛されっぷりが心底羨ましかった。
「まーくんの家、行ってくる。朝から連絡取れないけど」
「…絵麻。レスがないなら放っておきなよ」
レイナのそんな忠告は、全く耳に入ってこなかった。
この記事へのコメント
距離感おかしい。
親も娘をちゃんづけで呼ぶw