「金とステータス目当てとわかっているが…」準ミス慶應と婚約した男の葛藤

恋に落ちた相手は、無謀にも準ミス慶應だった


直哉は、徳島出身で、両親は地元で農業を営んでいる。両親だけでなく、付き合いのある親戚はほとんど高卒という家庭環境で育った。

そんな直哉だったが、誰に似たのか、幼いころから機械いじりが大好きだった。家にあったラジオやリモコンなどを分解して組み立て直しては、いくつも動かなくさせてしまい、よく母親に叱られていたという。

「自分が組み立てたものが動き出す瞬間を見るのがたまらなく好きだったんです。なんていうか、その機械に魂が宿ったような気がして。なかなか理解してもらえないんですけど、言葉にできない高揚感があったんです」

直哉はこうして、いつしか、皆が使う電化製品を自分が作りたい、という思いを抱くようになった。そして、大学で機械工学を学ぶべく懸命に勉強し東工大に進学した。そこまで裕福な家庭でなく両親は国立大への進学を切望していたため、合格を泣いて喜んでくれた。

直哉は大学に進学すると、生活のためにアルバイトを掛け持ちせざるを得なかったが、好きなことを好きなだけ研究できる環境はとにかく楽しかったと語る。

そんなある日、とある事件が起きた。直哉は恋に落ちたのだ。

「こんなこと人に言うの恥ずかしいんですけど、一目惚れしたんです。塾講師のアルバイトで出会った女性です。初めて会った時すっごく可愛いなと思ったら慶應のミスコン準グランプリをとった子だったんです。今まで機械しか相手にしてこなかったから、これが初恋みたいなものでしたね、まあ、それが今の婚約者なんですけど(笑)」

照れ笑いしながら当時のことを語ってくれた直哉。しかし、大学時代と、その数年後の大手電機メーカーに就職が決まったときと、2度彼女に告白したが、2度とも見事に玉砕してしまったそうだ。

「彼女、慶應の内部生とずっと付き合っていたんですよね。なんかいけ好かない金持ちって感じの男で、何でこんなやつと…ってずっと思ってましたね。まあ、冷静に考えたらミス準グランプリとただの機械オタクが釣り合わないことは、頭では理解していましたけどね」

直哉が彼女を射止めたのは、これよりずっと後だった。

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