健斗に贈るクリスマスプレゼントを何にするか。
ノーアイデアのまま時間が過ぎ、舞は焦っていた。だが、ヒントは意外なところから与えられるものだ。
クリスマスまであと1ヶ月となったある夜。
舞は丸の内で健斗の到着を待っていた。この日、有楽町で遅い会食予定のある健斗が、会食までの間、小一時間だけ舞のために時間を作ってくれたのだ。
待ち合わせの丸ビル マルキューブに到着すると、何やら幻想的な、宇宙に向かって伸びていくようなオブジェが飾られている。
−クリスマスのイベントか何かかな…?
綺麗だなぁと思うものの、何のモチーフなのかピンとこない。しかしその答えは、意外な人物から教えられた。
「スター・ウォーズだね」
ふいに背後から声がして振り返ると、そこにはオブジェを仰ぎながら満面の笑みを浮かべる健斗がいた。
「俺、スター・ウォーズ大好きなんだ。最新作の『スター・ウォーズ / スカイウォーカーの夜明け』が12月20日から公開されるから、きっとそのクリスマスイベントだね」
「へぇ…スター・ウォーズ…」
どうにか話を合わせたいが、舞はスター・ウォーズをよく知らない。もちろん誰もが知る有名な映画だからなんとなくは知っているが、語ることはできなかった。
しかしそんな舞をよそに、健斗は興味深そうにあらゆる角度からオブジェを堪能している。
「スター・ウォーズはさ、会社経営にも通ずる哲学があるんだよ。和の心や、禅の教えに繋がる物語もあって勉強になるんだよなぁ…!」
−そ、そんなにスター・ウォーズが好きなのね…!
熱く語り出した健斗の勢いに圧倒されてしまう。
これまでにも、どうやら健斗はメカやガジェットが好きらしいという情報は掴んでいたが、スター・ウォーズのファンだとは初耳だったのだ。
しかし、無邪気な瞳でオブジェを眺める彼の横顔を眺めるうちに、先日聞いた祐奈の呟きを思い出した。
−このメニュー、スター・ウォーズのインスパイアメニューだって。
そうだ。同期の祐奈とディナーをした『MAISON BARSAC』。確かあの店でも、スター・ウォーズのプロモーションをしていた。
◆
その夜、健斗との短いデートを終えて、一人で暮らす目黒のマンションに帰宅した舞は、タブレットで、丸の内エリアのクリスマスイベント「STAR WARS Marunouchi Bright Christmas 2019 -Precious for you-」についてじっくりと調べてみた。
丸ビル、新丸ビル、丸の内ブリックスクエア、二重橋スクエアなど丸の内の各所で、スター・ウォーズにちなんだオブジェの展示やイベントが開催されているようだ。
さらには、丸の内エリアの対象店舗で、ここでしか買えないスター・ウォーズのオリジナルグッズが販売されているらしい。
「これだわ!やっと見つけた!」
舞は、あるグッズに目をつけ、思わず一人で声をあげた。
『エストネーション有楽町店』で販売されているというスター・ウォーズのパーカー。これなら、スター・ウォーズが大好きな健斗の心を掴めるに違いない。
翌日、会社帰りにさっそく有楽町ビル内の『エストネーション有楽町店』へと走り、パーカーをゲットした。
−早く、彼の喜ぶ顔が見たい…!
心躍らせながら帰路につくと、ちょうど健斗からもクリスマスディナーの誘いが届いたのだった。