今年もやってきた、クリスマスシーズン。
街中がイルミネーションで彩られ、一気に華やぎを増す季節。
誰しもが浮かれるこの時期に、男女が頭を悩ませることといえば…想いを寄せる相手に贈るプレゼントではないだろうか。
損害保険会社に勤める丸の内OL・橋口舞には、知人の紹介で出会った、恋人未満的存在の彼がいる。
クリスマスを一緒に過ごそうと誘われ浮かれる舞は、彼が喜ぶプレゼントを探しているところだ。
果たして舞は、彼の心をグッと掴み、彼女に昇格することができるのか…!?
恋人未満の男性の心を掴むには、どうしたらいい…?
「ねぇ…いい雰囲気だけど恋人未満の彼にクリスマスプレゼントをあげるとしたら、何がいいと思う?」
ビジネスマンやOLたちで賑わう、金曜夜の丸の内。
新丸ビルの『MAISON BARSAC』にて、人生の一大事かのごとく真剣な面持ちを浮かべる女性がいた。
橋口舞。損害保険会社の丸の内本社で働く32歳だ。
「イケてるハイスペ男子に贈る、重くないけど気の利いたプレゼントってなんだろう…?
まだ付き合ってるわけじゃないし、彼もそこまで高価なものを望んでいるわけじゃないと思うし…ああ、ダメ。まったく思いつかない」
舞は、絶望的な声を出す。しかし目の前に座る同期の祐奈は、舞の悩みを「さぁ、なんだろ?」と完全スルー。
オーダーした料理「鮑とサーモンのコンソメゼリー サラダ仕立て」を見つめながら、「へぇ。このメニュー、スター・ウォーズのインスパイアメニューだって」などと呟き、まったく違うことに関心を示している。
舞も、祐奈の塩対応には慣れっこで、大して気にも留めずに再びウンウンと一人頭を悩ませるのだった。
舞には今、意中の相手がいる。
星野健斗。父親が経営する貿易会社の後継で、現在は副社長として役員に名を連ねるハイスペック男子である。
しかも聞くところによれば、長年低迷していた業績をV字回復させたやり手らしいのだ。
舞と健斗の出会いは、およそ1ヶ月前。時折参加しているお料理教室で知り合った年上の女性が、二人を引き合わせてくれた。
育ちの良さを感じさせる整った顔立ちの彼に、舞は一目で好意を持った。
健斗の方もおそらく、気に入ってくれているはずだ。
この1ヶ月で2回デートしているし、こまめに連絡もある。さらには、まだ正式に誘われていないが、健斗の口から“クリスマスディナー”というワードも出ていた。
−クリスマスが勝負よ…!
何か、気の利いたインパクトのあるプレゼントを用意したいところだ。健斗は凝り性で、好きなものにはとことんハマるタイプだとは聞いているが、なかなか良いアイディアが思い浮かばない。
だけど舞はこの機会に、健斗の心をグッと掴みたいと考えているのだった。