僕のカルマ Vol.3

「実は僕、先生に…」。かつての同級生が明かした、34歳エリート男の信じられない過去

世の中は、弱肉強食の世界だ。

特に、この東京で生きる男たちにとっては。

皆、クールな顔をしながら、心に渦巻くどす黒い感情を押さえつけるのに必死だ。

弁護士としてのキャリアを着実に重ねる氷室徹(34歳)は、パートナー目前。年収は2,000万を超える。圧倒的な勝ち組と言えるだろう。

しかし、順風満帆に見えた彼の人生は、ある同級生との再会を機に狂い始めていく。

思い上がり、嫉妬、嘘、過ち、復讐…。

一体何が、彼の人生を破滅させる引き金となったのだろうか。

◆これまでのあらすじ

氷室はあるとき、かつての同級生・堀越と偶然出会う。再会した彼は、成功を手にしていた。

その堀越からの依頼を、パートナー昇進への足がかりにできると考えた氷室は上層部にも話を持ちかけるが…。


「本日はありがとうございました」

恭しく頭を下げながら、氷室は礼を述べた。横にいる秘書の宮瀬も同様だ。

−これは当時の同級生連中が想像できる光景じゃないだろうな。

なぜなら、その相手は“堀越”なのだ。事務所まで出向いた彼と案件についてのミーティングを行い、エレベーターホールまで送り届けているところだった。

あの氷室が、堀越に頭を下げている。当時であれば、何事かと注目を集めていたに違いない。

しかしながら、これはビジネス。堀越はクライアントで、氷室はその業務を委任される弁護士なのだった。

「引き続き宜しくお願い致します」

堀越の側もエレベーターの中で深々とお辞儀をするが、正直、名刺の渡し方や敬語の使い方など、彼の所作は氷室から見ると決して褒められたものではなかった。

バッグがエコバッグだったのも、ビジネスマンとしてはいかがなものだろうか。

−まあ、『レ・カカオ』を手土産に持ってきたのだから十分及第点と言えるだろう。

堀越が手に提げたバッグには、今回の案件に関する資料一式が収まっている。もちろん、見積書や契約書も。

氷室は、サインされた契約書を受け取る自分を想像し、頭を下げたままほくそ笑んだ。

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