オトナな男 Vol.5

「彼氏と、別れちゃえばいいのに・・・」男の甘い誘いに乗った女への、酷い仕打ちとは

ただ見惚れているだけのつもりだったが、次の瞬間、これまで我慢していた気持ちが一気に溢れ出てくる。次々とこぼれて止まらない涙に咲希自身も驚いていた。圭太の顔が涙で歪んで見えない。

「うん、辛かったんだね。寂しかったよね」

そう言いながらそっと咲希を抱きしめる。

「……落ち着いた?」

しばらくした後、優しく問われて、咲希は涙を拭きながら頷く。

「咲希ちゃん、寂しくなったらいつでも俺のところにおいで。これは別に悪いことじゃないんだよ。咲希ちゃんの心が一番大切なんだから」

圭太の言葉が、咲希の心にスッと入る。

「ま、でも咲希ちゃんに彼氏がいるっていう勘は、外れてて欲しかったけどね」

寂しそうにそう言いながら圭太は起き上がる。

「早く服着ないと、風邪ひいちゃうよ」



圭太と過ごした翌日、咲希はいつも通り出社した。一晩経った今、昨日の圭太との出来事を受け入れてしまっている自分に気づく。

―悪いことじゃない。

圭太の言葉が咲希の気持ちを軽くしてくれた。トイレの鏡で自分自身を見つめてみると、いつもより表情がかろやかになっている気がする。先週までの重たい気持ちはどこかへ消えていた。

「高宮さん、おはよう」

デスクに戻る途中で圭太とすれ違った。圭太は昨日のことなんてなかった事のように同僚たちとあっさりと通り過ぎていく。

通り過ぎた後に残された香りが鼻をかすめた瞬間、世界が止まったような感覚に陥った。振り返って圭太を目で追う。まるで、この世界で圭太にだけ色がついているようだった。

また、あの時間を過ごしたいー。
あの腕に抱かれたいー。


圭太の後ろ姿を見つめていると、喉の奥がぎゅっと小さくなって一瞬呼吸が止まる。10秒ほど立ちすくんでいたところで、梨江子に声をかけられた。

「高宮さん、どうしたの?また彼氏と何かあったの?」

梨江子には、これまでにも飲み会の席や休憩時間に色々と話を聞いてもらっていた。私も遠......


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