病める時も、ふくよかなる時も Vol.5

「今更奥さんとなんて、勘弁してよ」暴言に傷つく人妻を救った、若い男の行動とは

ただでさえ上気していた美月の顔が、さらに赤くなる。

「ご…ごめんなさい…。多分、お腹が空いてるだけです…」

消え入りそうな声でそう弁明するものの、恥ずかしさのあまり甲斐の顔を直視することができない。

だが、うつむきながらもチラッと甲斐の顔をうかがうと、さっきまで心配そうに美月を見つめていた甲斐も同じように下を向いているのだった。

細かく小刻みに震える肩。よく見てみると甲斐は、口元に手を当てて必死に笑いをこらえている。

「すいません、帰ります!」

いてもたってもいられずにその場から逃げ出そうとした美月だったが、そんな美月の腕を次の瞬間、再び甲斐の腕が捕まえた。

甲斐は、笑いを噛み殺しながら美月に囁く。

「ちょ…ちょっと待って…。いいものあるから、良かったらバックヤードまで来てくださいよ」


「えーっと、栗山…美月さんだっけ。コレ、一箱あげます」

カーテンで仕切られた四畳半ほどのバックヤードで甲斐が取り出したのは、『銀座 鳥繁』のお土産の焼き鳥だった。

「えっ!ここ、テイクアウトできるんですか?『鳥繁』、すっごく美味しいですよね!」

そう目を輝かせて驚く......


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