病める時も、ふくよかなる時も Vol.4

「危ない...!」男性客で賑わうボルダリングジム。目眩に襲われた主婦を救った、男の正体とは

お猪口のように小さなグラスに注いだわずかな酵素ドリンクは、これ一杯だけで1日に必要な酵素を摂取できるのだという。

この2週間のあいだ美月は、誠司と共にしない食事をもっぱらこの酵素ドリンクに置き換えて、摂取カロリーカットに励んでいるのだった。

「今日の夕食、終わり…っと」

ひとりぼっちのキッチンで、そう声に出してみる。

「ごちそうさまでした…」

美月の呟く声に、反応する人はいない。

幸福からはあまりにもほど遠い、味気のない食事。

誠司が不在の今は、いつもであれば桐乃と笑顔で焼肉とビールを楽しんでいる時間のはずだ。その事実が、美月の虚しさをますます募らせた。

虚しさを通り過ぎ、もはや言い知れない不安感に襲われはじめた美月は、半ば無意識のまま着替えの入ったトートバッグを掴む。

―虚しい…。でも…痩せなきゃ…。痩せて綺麗にならなくちゃ…。

その言葉だけが、美月の頭の中をグルグルと駆け巡っていた。


気がつけば美月は、ボルダリングジムを訪れていた。

土曜の夜のジム内は、いつもとは全く雰囲気が違う。

普段通っている平日の朝には利用客は美月だけしかいないのだが、今夜はそう広くないジムの中に3人の男性利用者が存在していた。雑談を交わして盛り上がっている様子から見て、もともと......


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