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  • 「もう、私に興味ない?」あんなに情熱的だった彼が、そっけなくなってしまった理由とは

    翌週の土曜日。

    約束の19時を少し過ぎた頃に『ビキニ シス』に入ると、祥吾はすでに席につき1人でペリエを飲み始める所だった。

    「遅れてごめん!」

    そう言いながら駆け寄る梓に、祥吾は怠そうな声で「遅いよ…」と言いかける。

    そして次の瞬間、梓の方へと顔を向けると、驚きの表情を浮かべたのだ。

    「梓…!」

    艶やかなレースのブラウスとエレガントなプリーツスカートに身を包んだ梓は、優しげなオレンジ色の明かりに照らされて女性らしさを際立たせている。


    先週のデートとは比べ物にならない、フェミニンなオーラ。言葉が声にならない様子の祥吾を前に、梓は照れ臭そうにクルッと一周してみせた。

    「えへへ…。久しぶりにオシャレしてきちゃった。どうかな?」

    先週、麗奈のアドバイスを受けて梓が駆け込んだのは、六本木ヒルズのピンキー&ダイアンだった。

    祥吾のことが好きな気持ちは、出会った頃から変わらない。

    その想いが少しでも伝わるように、祥吾が何度も「可愛い」と褒めてくれたピンキー&ダイアンの服で、もう一度この恋に輝きを取り戻したかったのだ。

    祥吾は少しの間ギクシャクとためらったかと思うと、まっすぐ梓のことを見つめながら呟く。

    「…めちゃくちゃ可愛い」

    出会った頃と変わらないくしゃくしゃな笑顔に、梓の胸が熱くなる。

    梓は祥吾の視線を受け止めながら、強く心に思った。

    ―今夜はたくさん話そう。あの頃の2人みたいに!


    前回の白けたデートが悪い夢だったかのように、2人の会話は途絶えることなく弾み続けた。

    久々の親密な会話を楽しんだ梓は、食後のコーヒーに手を添えながら祥吾の方に向き直る。ここのところ2人の間に不穏な空気が流れていたのは自分のせいだと、謝りたかったのだ。

    「祥吾。最近の私、祥吾の前で完全に手抜きしてたよね。彼女がデートにオシャレしてこないなんて、失礼だったと思う。これからは頑張るから、許してほしいな…。私、祥吾のことが変わらず大好きだから」

    それを聞いた祥吾は、持ち上げていたカップを静かにソーサーに戻すと、大きく深呼吸をする。そして両の手のひらでおもむろに目を覆うと、脱力するように声を漏らした。

    「良かったぁ〜…!」

    「良かったって…何が?」

    怪訝な顔を浮かべる梓に、祥吾は安堵の表情を見せる。

    「いや…。今日みたいな女性らしい服装は、正直ストライク。でも梓は、どんな格好してたって可愛いよ。

    たださ、最近はあまりにも昔と違うゆるい格好ばっかりだったから。手抜きされるくらいもう俺に興味がなくなったんじゃないかって…ずっと不安だったんだ」

    「祥吾…」

    ずっと聞くことができなかった祥吾の本音。お互いが同じ不安を抱えていたと思うと、ほっとしたような可笑しいような気持ちになる。

    だがそんな気持ちに浸る暇も与えず、祥吾は急に立ち上がり梓に囁いた。

    「帰ろう。今日、家に行っていいかな?」

    予想外の言葉を聞いて、嬉しさのあまり「もちろん!」と即答しようとした梓だったが、その瞬間、ある重大な問題を思い出した。

    明日は日曜日。

    長野の母が、朝から上京してくる日だったのだ。

    「あの…実は明日、母がうちに来ることになってるの…」

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