東京ワーママ戦線 Vol.3

「すっかり“お母さん”になったね」元カレからの痛烈な一言に動揺する、育休明けの28歳女

凛は同期の中でも飛びぬけて“華”を持ち、それだけで一目置かれるような存在だった。

高身長でありながら透明感のある肌と長い茶色の髪は、同性でも目を奪われるほどだが、素直すぎる物言いにたびたび周囲を困らせてしまう。

―根は嫌いじゃないのだけど・・・。

まだ独身を謳歌する凛とは人生の目指す方向性が違いすぎて、ここ2年ほどは個人的に連絡することもなかった。こんな喧嘩を売られてしまうなんて、想像もしていなかったのに。

「すみません、保育園のお迎えに行かなきゃいけないので、お先に失礼します」

翌日、翠が16時で退社しようとすると、凛が偶然後ろを通りかかり、独り言のように呟いた。

「早く帰れて羨ましい。私、今日も残業しなきゃいけないのに」

翠が振り返ったとき、すでに凛はデスクについて素知らぬ顔をしていた。

「残業したくてもできないの。凛に私の気持ちなんてわからないでしょ」

そう言い返してフロアを出たあと、気持ちを落ち着かせようと化粧室に入って鏡を見た。

化粧直しをする時間がなかったから、口紅はもちろんアイブロウまで落ちた顔は疲れを隠しきれていない。会社でも家でも時間に追われバタバタと毎日が過ぎ、自分のことはすべて後回しになっていた。

ふと香水の匂いがしたかと思うと、横に凛が立っていた。こちらを気に留めることなく、口紅を引いている。


彼女の長いまつエクとピンクのジェルネイル、綺麗に巻かれた髪に釘付けになっている自分に気付き、化粧室を飛び出した。

自分はもう凛のように着飾ることを忘れてしまったのだろうか。前は仕事が忙しくても服を買ったりエステに行ったり、女子力を上げることでストレスを発散していたのに、今はすべ......


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