モテる男 Vol.9

「比較検討するのは当たり前」モテ男の彼氏がいるにも関わらず、別の男と会う女の本音

男女の機微


「別に一度会ってみるくらいいいじゃない。摩季は今、一生を共にする結婚相手を探してるんだから、比較検討するのは当たり前のことじゃない?それに…」

裕子はそこで一度口ごもり私の表情を伺う。そして淡々と、言葉を続けた。

「それはきっと彼も同じ。商社マンの彼だって、摩季以外の女の子を見ていないとは限らないでしょ?…というか、見ていないわけがないと思うけど」

キツイ指摘だが、裕子の言っていることは間違っていないだろう。

勇輝の周りには女がうようよいる。別に彼の方からどうこうしようという気は無くとも、寄ってくる彼女たちの存在を無視しろという方が非現実的だ。

「恋愛はバカ正直に思ってたって報われるわけじゃない。摩季が追いかけてるようなモテ男はむしろ、他の男と天秤にかけられてるくらいの方が燃えるんじゃない?そのくらいのしたたかさを持ち合わせてないと、いつまでたっても振り回されるよ」

そうなのだ。裕子の言うことは一理ある。

私は駆け引きの類が苦手だし、今までもこれからもするつもりはない。しかしだからと言って、このままただ勇輝を追いかけているだけじゃダメだってことはわかる。

−恋愛はバカ正直に思ってたって報われるわけじゃない。

裕子の言ったセリフはぐさりと刺さった。実際、現実だってその通りなのだ。

香織のこともそう。私にもっと余裕があれば、香織の分かりやすい挑発に乗ることなんてなかった。むしろ彼女の攻撃を逆手に取り、勇輝との絆を深める方向に持っていく方法だってあったはずなのだ。

「とにかく。私が摩季の立場なら、花苗おすすめの彼に会ってみるな。知り合っておくことに損なんかないもの」

強い口調で言い切った裕子に、花苗も続ける。

「どうする?…別に無理する必要はないけど、本当にいい人みたいだから。嫌じゃなければ一度、どうかなぁ」

おずおずと、しかし花苗にしては積極的に尋ねてくる。彼女がこんな風に言うところをみると、おすすめの彼は本当に“いい男”なのだろう。

そして私も、裕子と花苗の助言のおかげで少し吹っ切れた感があった。

変わりたい。変わらなければという思いが背中を押した。勇輝のことが好きだからこそ、ただ追いかけていてはいけない。彼だけを見ていてはダメなのだ。

「…わかった。一度会ってみる」


その後の段取りは、超特急で進められた。

花苗が婚約者を介してその彼と連絡を取ってくれ、勇輝が出張から戻る前日、仕事帰りに二人で会うセッティングを整えてくれたのだ。


そして、約束の日。

私は一応ワンピースを選ぶには選んだが、特別にオシャレをするわけでも、気合をいれるわけでもなく、至って平常心で待ち合わせ場所へと向かった。

しかし、男女の関係とはどうしてこうも複雑かつ難解なのだろう。

何とも思っていないからありのままの自分をさらけ......


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