パリでの修業時代、急性胃炎を患った。食欲なく、お粥を欲するも手に入らず。その時、店のマダムに勧められたのが野菜のポタージュだった。飲むと胃が優しく癒やされる。フランス人にとってポタージュは前菜ではなく、心を支える存在だと知った。
“優しさ”の意味を持つ『tendre』の開店時、住宅地に近いこともあり、帰路に心をほぐして欲しいとメニューにした。いずれ、この店も誰かを支える存在になるのだろう。
久保田歩シェフ。20歳で渡仏。帰国後、『コートドール』などを経て、飯田橋『メリメロ』に入店。再度パリに渡り、帰国後は代々木上原『ル・キャバレー』で料理長を務める。今年2月、オーナーからの誘いを受け開店と同時にシェフに就任。タンドール窯で焼く肉料理など、フランスの時流を独自に解釈した料理が楽しめる。