Who? Vol.3

隠していたトラウマを突かれ、女の甘言に堕ちた男。こうして夢見た青年は、地獄の扉をノックする

—この男は、誰だ?—

明晰な頭脳と甘いマスク、輝かしい経歴を武器に、一躍スターダムにのし上がった男がいる。

誰もが彼を羨み、尊敬の念さえ抱いていた。

だがもしも、彼の全てが「嘘」だったとしたら?

過去を捨て、名前を変え、経歴を変え、顔を変えて別人になり、イケメンジャーナリストとしての地位を手に入れた、レオナルド・ジェファーソン・毛利。通称『レオ』

唯一の秘密の共有者であった、芸能界の『女帝』が死んだことを境に、不可解な出来事がレオの周りで起こり始める。

『女帝』とレオが出会った、15年前の出来事とは…?


『人に欺かれるのではない。自分で己を欺くのである:ゲーテ』


「俺みたいなアルバイトでも、名刺って作れますか?」

テーブルの上に残されたプラスチックのカップや書類を片付けながら、僕は佐藤さんに尋ねてみた。

会議が終わりみんなが出て行ってからも一人、ノートパソコンで作業を続けていた佐藤さんが、その手を止めぬままチラリと僕を見た。

「作りたいんだったら作ってもいいけど…急にどうした?あ、もしかして女帝がらみ?あの人優也のこと、妙に気に入ってたみたいだしな」

それは、女帝…一条さんが部屋を出て行くとき、見送りのため立ち上がったスタッフに一通り挨拶を済ませたあと、部屋の隅にいた僕を探し当てるように振り返り、こう言ったからだろう。

「アルバイトくん、あなたもお疲れ様。またね」

会議前に女帝となんかあったのか?と佐藤さんにサラリと聞かれた僕は、

「ご挨拶をした後は、特に…あとはその、世間話をしたくらいで…」

と、嘘をついてしまった。

「今日ここで私が話したことは、まだ佐藤さんには秘密にしておいて。私たち二人の秘密。近々連絡するから、一度ゆっくりお話ししましょう。二人で」

なぜ秘密にしなければいけないのかも僕には理解できていなかったが、僕は、「秘密ね」と言った一条さんとの約束を守ってしまった。

佐藤さんについた、はじめての嘘。

僕の心臓がドクン、ドクンと波打つ。

「ふーん、じゃあなんで突然、名刺を作りたくなったの?」

佐藤さんに聞かれた僕は、必死で言葉を繋げる。

「…社会人として、“アルバイトくん”って呼ばれるのはちょっと恥ずかしいなと思ったんです。その、自分がただの雑用係だとは分かってますけど、あの、それでも、名前を出して責任をもって仕事をしたいな、って」

「…なるほどね」

佐藤さんはそう言うと、パタンと音を立ててノートパソコンを閉じ、立ち上がった。

「優也、俺はお前が名刺を作りたいという意識が芽生えたこと自体は良いことだと思うよ。優也が言う通りアルバイトだろうと自分の仕事に責任は持つべきだ。総務部に行って、作ってもらえ。話は通しとく。ただ、優也…」

ありがとうございます、と言いかけた僕がその言葉を止めると、佐藤さんが、フッと笑って続けた。

「お前、嘘が下手だな」

ー初めての小さな嘘。そしてこれが、恐ろしい日々の始まりになるのだった…ー.....

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