最後の恋 Vol.2

最後の恋:20日間、姿を消した夫。“昔好きだった男”に心奪われた妻へ、非情な制裁が下された夜

人はいつだって、恋できる。

だが振り返ったときにふと思うのだ。

あのときの身を焦がすような激しい感情を味わうことは、もうないのかもしれない。あれが「最後の恋」だったのかもしれない、と。

それは人生最高の恋だったかもしれないし、思い出したくもない最低な恋だったかもしれない。

あなたは「最後の恋」を、すでに経験しているだろうか…?

この連載では、東京に住む男女の「最後の恋」を、東京カレンダーで小説を描くライター陣が1話読み切りでお送りする―。

先週は、外銀男・悠の話を紹介した。

今回は、そんな悠を捨てた由梨子の、その後の物語。


「由梨子ちゃんのこと、あの頃本当は、好きだったんだよ」

“彼”からそう耳打ちされたとき、今まで知らなかった感覚が私の全身を駆け巡った。心臓がトクトクと脈打ち始め、全身に熱い血が一気に流れ出す。そんな不思議な感覚だったー。



それは、今から5年前。

当時37歳だった私は、結婚して2年目になる夫と、高輪のマンションに二人で暮らしていた。

5歳年上で、中小企業を経営する進次郎は、私にとってまさに理想の夫だ。温厚な性格で、豊かな暮らしを与えてくれる経済力を持ち、私のことを深く愛している。

だからこそ私は、それまでの青春の延長のような恋愛関係にピリオドを打ち、進次郎を結婚相手に選んだのだ。

彼に対して、熱く燃え上がるような感情もなければ、ときめきもない。ただ、彼の隣にいると、なんとも言えない安心感に包まれ、とにかく居心地が良い。

それにー。

どんなに身を焦がすような恋も、一時の感情に過ぎない。

時が経ってしまえば、愛を誓い合った二人の関係は形を変え、ともに人生を歩む同志のような存在になる。夫婦とは、そういうものだ。

そう信じていたから、私は進次郎との夫婦生活に、心から満足していたはずだった。



それなのにどうして私は、あの時、過ちを犯しかけたのか。

5年経った今、心の底から後悔している。

あの日、あの場所にさえ行かなければ、きっとこんな風に、取り返しのつかない結果を招くことはなかったのに。

この記事へのコメント

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No Name
博紀とは結局なにもなかったのに、旦那は他の女とできてて…これはひどい。5年って、そんなに経っても想いが消えないくらいなら、せめて離婚してから会いに行くくらいのケジメをつけないとミホにも失礼なのでは。進次郎むかつく!
2019/01/14 05:2699+返信11件
No Name
記憶力が悪いから、いつも前回のを読み直し、「あっ、二股かけてて、歯ブラシ隠してた人か!」と思い出す… 疲れる笑
2019/01/14 05:3499+返信8件
No Name
よく出来たオムニバス小説ですね。
朝から引き込まれました。
次回のミホの気持ちが気になる。本気なのかな?
2019/01/14 05:1399+返信7件
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