その発言は、今や同世代から羨望の眼差しを注がれる内田さんのものとは思えず、等身大の27歳だった。その感想を率直に伝えると、彼女はぽつりと言った。
「昔から競争心がなくて、一番になりたいと思わないんです」
彼女の表情は清廉潔白で、本心を語っているように見えた。
しかし、芸能界は競争が激しいところだ。一線で活躍できるのはほんのひと握り。漫然とやっていると、たちまち蹴落とされてしまう。
「やっぱり周りには諭されます。もっとハングリー精神を持てと。でも、私にとってはみんなが幸せな方がいい。そんな私はふわふわと過ごしているようですが、今では、その個性を全うしてやってきてよかったと思っています」
内田さんの言葉は腑に落ちる。生き様や性格は顔に出るというが、目の前の彼女は無邪気であり、そのオーラは柔らかで穏やかだ。それでいて芯がある。
今後のキャリア形成を訊ねると、「女優業とモデル業の2本柱をより強固にしていきたい」と目をより大きく見開くのだ。
「世間の方にはモデルの印象が強いかもしれませんが、モデルの撮影現場に行くと『女優さんだもんね』と言われる。
どちらの仕事も大好きだから、二足の草鞋を履くスタンスで続けていきたいけど、今はいずれも〝ホーム〞と呼べるほどしっかり根を下ろせていないので、『私は女優とモデルをやっています』と、胸を張って言い切れるようになりたい」
最後はちょっぴり語気が強くなったが、そこには内田理央の秘めたる欲が見えるようだった。そしてそれは、欲望に忠実な六本木の街の波長とどこかシンクロしているように感じられたのであった。
■プロフィール
内田理央 1991年、東京都生まれ。大学在学中に、芸能界デビューを飾る。現在は女優業だけではなく、モデルとしても活躍する。最新作は『連続ドラマW 盗まれた顔 ~ミアタリ捜査班~』(WOWOW)。
■衣装
コート¥56,000〈LE CIEL BLEU/ルシェルブルー カスタマーサービス TEL:03-3404-5370〉、ワンピース¥110,000〈ADEAM/ADEAM 東京ミッドタウン店 TEL:03-3402-1019〉、イヤリング¥40,000〈エスティーム/ドレスアンレーヴ TEL:03-5468-2118〉
■クレジット
Photos/Akira Maeda@MAETTICO, Kazuhiro Fukumoto@MAETTICO(shop data), Styling/Junko Okamoto, Hair&Make-up/Mifune, Text/Mio Amari
内田さんが訪れたのは...
『R2 SUPPER CLUB』
1930年代のN.Y.にあったサパークラブから着想を得てつくられたラウンジバー。一段高いところに設置されたラグジュアリーなボックスシートには、妖艶な空気が流れる。
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