美しいひと Vol.11

「こんな彼、見たくなかった...」暴露された“不都合な真実”に、男がとった残酷な態度とは

小さな引っかかり


「平塚くん、また恵美と仕事してるんだってね」

岸さゆりの本性を、平塚くんに伝える。

今夜の目的はそれに尽きるのだが、しかしなかなかタイミングを計れない私は、本題を切り出せないまま別の話題を彼に振った。

「ああ、そうなんだ。また声をかけてもらって有難いよ」

彼は白い歯を覗かせ、爽やかに笑った。そして、その端正な顔をこちらに向けたまま、意外な事実を私に伝えた。

「彼女、僕に美咲さんのことをよく話してくれるよ。大学時代からずっと親友で、まっすぐで頑張り屋で、美人で自慢の友達なんだって。いい子だよね…恵美ちゃん」

−恵美、ちゃん?

恵美が私のことをそんな風に語ってくれていることにも驚いたし、嬉しく思ったのだが、しかし私は最後に平塚くんが恵美を“恵美ちゃん”と呼んだことの方が引っかかり、思わず眉をしかめる。

まいせん通りで二人の姿を見かけた時にも感じたが、私の知らぬ間に、一体いつの間に、下の名で呼ぶほど親しくなったのだろう。

…息が苦しい。モヤモヤとした灰のようなものが、心を侵食していく。

喉が渇き、胸のつっかえを流しこむべくカクテルを口に含んでいると、平塚くんの方から問いかけられてしまった。


「ところで話って…?」

思い出した、と呟いた後で、彼は私の瞳を優しく覗き込んだ。

「あ…あの私、わかったよ。平塚くんの彼女…岸さゆりさん、だっけ」

平塚くんの前で“岸さゆり”の名を出しただけで、胸がぎゅうと締め付けられる。

そして次の瞬間。その名を聞いた平塚く......


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