
女の嘘:「私、一人じゃ生きていけない…」男が簡単に騙される“子鹿女”の裏の顔
女は、息を吐くように嘘をつく。
それは何かと敵の多いこの世の中で、力に頼らず生き抜くために備わった、本能ともいうべき術なのだ。
それゆえ女の嘘は自然であり、かつ巧妙。特に男が見破ることなどほぼ不可能である。
これは、日常の彼方此方に転がる“女の嘘”をテーマにした、オムニバス・ストーリー。
第1話:子鹿女・奈美の持論
−私は、か弱い女のフリをして生きよう−
そう決めたのは、確か小学生の頃。
私、周りの子より少しばかり器量も頭も良かったから、自然とリーダー格になってしまうタイプだったんです。今でいう、カースト上位ってやつね。
けれどそういう立場にいると反感を買うことも多くて、正しいことを指摘しているだけなのに大人から「思いやりがない」とか「弱い者の気持ちがわからない」とか言われて面倒でした。
そんな時、何かでこんな話を読んだんです。
ライオンと対峙する子鹿の話。
小さくてか弱い子鹿が、大きくて強そうなライオンと向かい合っている。
そのシーンを見た10人中10人が「子鹿がかわいそう」「か弱い子鹿を助けてあげたい」と思うでしょう。
もしかしたら、ライオンは強そうに見えるだけで、本当は子鹿を虐めるつもりなんかないかもしれない。逆に子鹿の方が、か弱そうに見せているだけで物凄い凶暴かもしれない。
けれど見ているだけの人は真実など知る由もなく、子鹿を助けようとするに違いない、というお話。
ああ、つまり人って結局、自分より弱い人、馬鹿な人、不幸な人が好きなんだって。自分より強そうな者を憎み、弱そうな者に手を差しのべようとする、そういう生き物なんだって。
…だったら私は、子鹿側の女になってやる。
そう、幼心に悟ったんです、私。
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