美しいひと Vol.8

「独りでいたくない…」本命の彼に失恋し、違う男に逃げた夜。女が心に抱く"ある打算”とは

俊介と私の交際は、意外にも順調だった。

彼は私のことを「曲がってるんだか真っ直ぐなんだかわからない」と評したが、それは俊介もまったく同じで、一見捻くれて見えるのに、極端にピュアな側面もあったりする。

私が誕生日を迎えた時など、急にサプライズで銀座ブティックにやってきて「どれでも好きなものを買ってやる」などと言い出すから本当に慌てた。

「あの人、麗華の彼氏?めちゃくちゃカッコ良くない!?」
「どれでも好きなの選べ、なんて羨ましすぎる!」

バックルームに戻った後、同僚たちはキャーキャー言いながら私を囲み、質問責めにした。

こういう“女たちの恋バナトーク”を、私はこれまでずっと部外者として、輪の外から眺めて続けてきた。

それがまさか自分が、輪の中心になる日が来るなんて。とはいえ女たちから羨望の眼差しを浴びるのは、正直、とても心地よいものだった。

そんな私を花音だけは遠くから冷めた目で見つめていたが、彼女はもはや、俊介のことなどどうでも良いらしい。

というのも花音は、入社当時からずっと希望していた本社への異動がついに聞き入れられたとかで、早々に銀座ブティックを離れるらしいと噂されていた。

短い人でも3年、長ければ10年以上も販売員を続けるのが通例の会社で、2年目での本社異動は大抜擢だ。

そしてその噂は、間もなく現実のものとなった。

聞き流せなかった名前


花音の広報部への異動が正式にアナウンスされた日、私たちはお祝いと称し、仕事終わりに『ビストロ・マルクス』で乾杯をした。

俊介の一件で疎遠にはなってしまったが、彼女の仕事への取り組み方は私から見ても素晴らしいもので、販売実績もトップクラス。

抜け駆けするように本社異動が決ま......


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