「センパーイ!乾杯しましょー!」
金曜日、ホテルの宴会場を貸し切って行われたパーティーは、開始早々大盛り上がりを見せていた。
少し遅れて会場入りした美琴に駆け寄ってくるのは、しおりと葵だ。あのランチ以降意気投合したそうで、今日は二人ともよく似たミニドレスを身に纏っている。
しおり曰く、葵は早く営業部の皆に追いつきたい一心で、人一倍頑張る努力家らしい。それに元来の頭の良さも加わって、いまや旬と葵の二人の売上が、営業部の成績を大きく牽引しているようだ。
「きゃー!先輩ヤバイ!超綺麗です♡」
「ふふ、ありがとう!二人こそ、とっても可愛い!ミニドレス、脚が綺麗だから映えるわね!」
いままでの美琴なら否定していた褒め言葉も、素直に受け取れる。すると他人への褒め言葉も、自ずと口から出るようになっていた。
今日も履いている肌リフト STEPのおかげで、毎日のボディラインが綺麗に決まると、気持ちまで上向きになるのだ。半ば挫折しかけていたジム通いにも、俄然やる気が出てきた。
さらに肌リフト STEPには、「ながらエクササイズ機能」がついている。履いて歩いている間の歩幅が広くなり、ヒップの筋肉を使いやすい状態にしてくれるから、エクササイズ歩行への変化が期待できるのだ。
思春期以降、長年のコンプレックスだった下半身のシルエットが整ったことをきっかけに、美琴はもっと自分を好きになることができた。そのことが自信へと繋がっているのだろう。
「もしかして…美琴?」
後ろから美琴に声をかけてきたのは、旬だ。振り返った美琴を見て、目を丸くしている。
「…いつもと印象が違うから、気づかなかった。すげー似合うじゃん。」
「あ、ありがとう!それにしても新商品、旬と葵ちゃんが売上ツートップなんだって?すごいじゃない!」
褒め言葉をくれる旬の頰が染まっているように見えて、美琴は話題を変えた。そうでもしないと、嬉しくて飛び跳ねてしまいそうだった。
「あんないい商品、売れて当然です!あ、お酒取ってきますねー!」
「あ、私もお手洗い、行こっと。」
その場にいた葵としおりが、示し合わせたようにその場を離れていく。きっとお節介なしおりが、美琴の気持ちを葵に話したのだろう。
ーデートに誘うなら、いま!
美琴がそう決意した瞬間、背後から男性の声が聞こえてきた。
「葵ちゃん、今日も可愛いねー。」
「あの子が営業に移ったのって、見た目採用だろう?営業は接待が命だもんな~。」
その男性二人は、少し向こうにいる葵をニヤニヤと見ながら、噂話を続けている。本人たちは内緒話のつもりかもしれないが、周囲の人間に聞こえているのは明らかだった。
「あの…ちょっといいですか?」
美琴はそう切り出した。
葵はグラスを手に、戸惑った顔でこちらを見ている。彼女にもこの男達の会話が耳に入ったのだろうと思うと、いてもたってもいられなかったのだ。