恋と友情のあいだで~廉 Ver.~ Vol.8

「もう、夫とはしたくない…」 友達だった既婚男女が、不適切な関係に陥るまで

「廉くん、久しぶり!」

一瞬、皆の輪から外れた僕に声をかけて来たのは未祐だった。

未祐とは学生時代から同じ輪にはいるもののほとんど話した覚えがなく、僕はあまり彼女をよく知らない。

別に何があったわけではないが、未祐には昔からなんとなく避けたくなる空気があった。どこか人を値踏みしているかのような視線が、どうも苦手だったのだ。

しかし今夜はせっかく懐かしい仲間が集うパーティーである。僕もできる限り親しげに応じることにした。

「未祐はますますいい女って感じだな。なんて言うか、現役感がハンパないよ」

からかうように言ったが、それは褒め言葉でもあった。

昔から数々の浮名を流していた未祐は、男好きのする豊満な体つきを、露出度高めのドレスで惜しげもなく晒している。

男なら誰しも目を奪われるスタイルに、洗練された身のこなし。彼女がいつまでも“いい女”であろうとする意識の高さは、良くも悪くも家庭に染まった元カノ・結衣とはまるで違う。

「現役感って(笑)まあでも確かに、私は相変わらず西麻布でお食事会三昧してますけど」

あっけらかんと笑う未祐に、僕は何気なく問いかけた。

「里奈とは、今でも仲良いの?」

里奈の名を出したのは、彼女の近況を探ろうとか、そんな意図があってのことではない。しかし未祐の口から思いがけず、僕の知らない裏の顔が飛び出したのである。

「そうね、里奈とは今でも割と会ってる。あの子、結婚してはいるけどかなり自由だから。旦那もほとんど家にいないみたいだし。数合わせでお食事会に誘うと、けっこうな確率で来てくれるのよね」

「へえ…」

意識して、無関心を装う。すると未祐はわざとらしく声を潜めると、続けて僕にこう囁いたのだ。

「ここだけの話、里奈はもう旦那と“したくない”みたい」

未祐はすべてを言い終えてしまってから「あ、余計なこと言っちゃった」と口に手を当て、「秘密ね」と僕に念押しをするとその場を去った。


人妻からの誘い


里奈と夫・二階堂直哉の関係がうまくいっていないことは、LINEのやり取りでなんとなく知ってはいた。

しかしこうして第三者から、しかも里奈が最も仲良くしている未祐から、彼女が夫と“したくない”、つまり、もう夫を愛していないのだと知らされるインパクトは、僕を突き動かすのに十分すぎる威力を持っていた。

とはいえ僕も、人妻の寂しさにつけ込むほど下衆ではない。

けれどもついに、彼女を案じる思いが衝動に変わるきっかけを作ったのは…他ならぬ里奈自身だったのだ。

「廉のホテルで、二人で飲もうよ」

彼女が不適切な提案をしたとき、僕はすぐに断るつもりだった。「人妻が何言ってんだよ」と、咎めてやろうとさえしたのだ。

それなのに、なぜ。

次の瞬間、僕がとった行動は、理性が促す“正しい”行動とは真逆のものだった。

「渋谷のセルリアン、先行ってて」

気づけば僕は里奈の腕をぐっと引き寄せ、彼女の耳元でそう囁いていた。

…ほのかに漂う、甘く、危険な香りを吸い込みながら。


▶NEXT:8月21日 火曜更新予定
人目を避け、ひっそりとホテルへ向かった二人。ついに禁断の域に踏み込んでしまうのか...?



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