ダディ Vol.2

「妻にはバレない」は、絶対ありえない。40代男を窮地に陥れた、若い美女からのメッセージとは

今までのやり方が、通用しない!


「社長、すいません。少し宜しいですか?」

こうして社長、と呼ばれるのにもいい加減慣れなくてはいけないのだが、未だに嬉しいような、照れくさいような気分になる。

声をかけてきたのは、リョウの実質上の右腕、加納(35)だ。

生真面目な性格の加納は、アイディアと行動力頼りのリョウを、持ち前のキメ細かさでフォローしてくれている。協調性もあり、アルバイトの人間たちのケアも怠らない。

きっちりとした仕事ぶりに、リョウは完全に頼りきっていると言ってもいいだろう。

水と油のような性格の二人だというのに、独立する時に声を掛けて以来、今日まであまり意見がぶつかることもなかった。

だが、加納は明らかにいつもとは違う雰囲気を醸し出している。

ただ事ではなさそうなので、場所を変えることを提案し、加納を連れて早めのランチをとることにした。


リョウと加納は『熟成焼肉 肉源 六本木店』に入ることにした。

肉に目がない加納は、メニューを目にして一瞬顔を輝かせたが、オーダーを終えるとすぐに硬い表情に戻る。

「で…どうしたんだよ、加納。残業が多くて奥さんに文句でも言われたのか?」

出来るだけ明るい声を出したつもりだが、なんだか嫌な予感が拭えない。 今朝の朋美の時もそうだが、リョウのこうした勘は大体当たってしまう。

2人でひとしきり肉を平らげると、加納は表情を変えずに改まった。

「社長、勝手なことは承知です。だけど僕自身、もう限界なんです」

突然のことに、一体彼が何を言っているのかが、分からなかった。

「創業から一緒にやってきて、僕、社長の近くで全てを見てきました。今までは言えませんでしたけど、いつも思いつきで行動する社長の尻拭いばかりさせられてきた、という想いが強いんです。でも、指示や方針がコロコロ変わるのは、成長期の会社には必要なことだし、そのおかげでこの会社はどんどん成長して、人も増えてきてるんだと思ってます。でも…」

あっけにとられているリョウを目の前に、加納は眉をひそめながら訴える。

「社長からしたら男らしくない、って言われるのはわかっています。でも僕は、安定した環境で、もっと先の見えることをやっていきたいんです」

動揺やショックもあったが、加納の話を聞いてリョウが一番初めに浮かんだのは、自分への失望だった。

一番身近だったはずの、加納という人間の生き方や指向を全く考慮できていなかった。しかも、そのことに4年も気づかなかったなんてー。

加納は一切の迷いがない、といった表情をしている。この男の意思は、並大抵のことでは覆らないだろう。

「もちろん、今すぐ辞めるとは言いません。後任を見つけて引き継ぎをするまで、最低1ヶ月はお世話になります」

今までは従順だった彼の毅然とした態度に、驚きを隠せない。

リョウは、無双状態だと思い込んでいた自分の人生が崩れていく音を、リアルに聞いたような気がした。


▶NEXT:8月19日 日曜更新予定
プライベートにも仕事にも陰りが見え始めたリョウに、更なるトラップが襲いかかる

※本記事に掲載されている価格は、原則として消費税抜きの表示であり、記事配信時点でのものです。

この記事へのコメント

Pencilコメントする
No Name
旦那の稼ぎが良くなっても贅沢しない妻は得難い存在です。
金目当ての若い女にチヤホヤされて浮かれてないで、奥さん大事にしないと‼️
2018/08/12 06:2699+返信5件
No Name
さあて、若い女の子に浮かれてる場合じゃないね、どうする?
2018/08/12 05:3381返信6件
やっちゃったよ…
LINE交換した時点でアウトなのに…

社長としての器が無さすぎ…優秀な人に支えて貰っているのを解らないなんて…残念過ぎる。
主人公は物事を軽くしか捉えない思考の持ち主なら、この先は落ちて行くだけだろうねぇ。

私はリョウが必死に言い訳しているしか思えない。
2018/08/12 07:0277返信8件
No Name
リョウ、いいパパ。うちの24時間365日酒浸りだった父親とは大違い。こんな父親いるのかな。こんな風に育てられたかった。
2018/08/12 06:2524
No Name
なんか似た話が多いな〜
次は奥様がパーティーやって引き止め作戦でもやるのかな?
2018/08/12 08:4817
もっと見る ( 44 件 )

【ダディ】の記事一覧

もどる
すすむ

おすすめ記事

もどる
すすむ

東京カレンダーショッピング

もどる
すすむ

ロングヒット記事

もどる
すすむ
Appstore logo Googleplay logo