私の住む街 Vol.1

私の住む街:3年前に「脱・港区」したIT社長。華やかな生活を捨て、“千代田区おじさん”に転身する理由

「3年前までは、たしかに西麻布で毎日シャンパンを飲むような生活だったよ。この界隈はいいお店が多いしね」

そう言って見せてくれたインスタグラムの投稿は、たしかに3年ほど前まで、華やかな生活が垣間見れる写真で埋め尽くされていた。

金箔入りのシャンパン、一見さんお断りのレストランやバー、美女に囲まれたハワイのプールでの写真に、イビザ旅行。平日は毎日西麻布で飲み、休みの日は海外旅行や高級レストランでの食事を楽しむ。世間が抱く “成功者”としてのイメージそのものである。

しかし一見華やかで楽しいことばかりの日常に、疑問を抱き始めた瞬間があったようだ。

「生産性のない時間に、ふと虚しさを覚えたんだよね」

仁さんがちょうどそう感じ始めたとき、尊敬する経営者の先輩たちが続々と、夜の港区から離れていったらしい。


「成功している経営者の先輩たちは、湯水の如くお金を遣って遊ぶ生活を辞めて、トライアスロンとか、自分を鍛えることにシフトしていったの。逆に毎日西麻布で飲んでるやつらは、いま一歩伸び悩んでいるように見えた」

そうした周囲の変化を目の当たりにした仁さんは、それまで全く運動をしてこなかったにも関わらず、「まず自分でやってみよう」と、トライアスロンのトレーニングを始めたという。

「トライアスロンを始めたのは先輩たちに影響された部分が大きかったけど、港区で遊ぶ生活に虚しさを覚えるようになってからは、こう思っていたんだ。

もう物質主義の時代は終わったんじゃないかって」

またちょうどそのとき、世界的に有名なファッションブランドがイタリアのスポーツ用自転車メーカーを買収するというニュースを聞き、その思いがさらに強まったという。

「一流ブランドが、自転車メーカーを買収するなんて面白いなと思ってさ。

そのときに出てたプレスリリースを読んで、『これからはブランド物を持って人が満足する時代じゃない』ということに一流ブランドも気づいているんだって思ったんだ。

自転車のエンジンは化石燃料じゃなくて、自分のハート(心臓)だからね」

仁さんはこうして、港区で華やかに遊ぶ生活から一変、トライアスロンに没頭していった。

元々ひとつのことにのめり込むと、とことん追求するタイプ。いまでは週に4~5回はトレーニングに励んでいるという。

トライアスロンの大会では、4キロ泳いだあとに180キロの道を自転車でこぎ、フルマラソンを走る。それだけにトレーニング内容も過酷だ。25メートルを100本泳ぐこともザラで、53歳にして体内年齢は26歳、体脂肪率は9%だという。

「トライアスロンを始めてから、すっかり病気をしなくなったよ。やっぱり人間、健康がいちばん大切だからね。だからいま仕事以外は、時間もお金もトライアスロンに投資してるよ」

最近の一番の買い物は、自分仕様にフィッティングするのに7万円、本体は250万円するというロードバイクだという。

また、「都内の有名店はほとんど行き尽くした」という食生活にも、大きな変化があったようだ。

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