
時間をかけて旨みを湛えた熟成米の濃厚なおいしさ
凛とした佇まいの中に垣間見える柔和な一面、あるいは遊び心。土鍋の中でキリッと炊きあがる新米と、愛らしく添えられた銀杏や新イクラを見れば、ここ『晴山』に送られるそんな賛辞も腑に落ちる。正統派日本料理の確固たる基盤の上に、柔軟な感性が積み上げられて生まれる美しき一皿。
手がけるのは店主・山本晴彦さん。岐阜の名店『たか田八祥』で12年に亘り腕を磨いた人物だ。師である高田晴之さんの元で学んだのは、日本料理の枠を軽々と飛び越え、食材本来の旨さを引き出す柔軟性。その技と心が、現在も脈々と受け継がれているのである。
さて、話を新米に戻そう。10月下旬、通常の新米よりやや遅れて届く熟成米。あえて収穫を遅らせることで、旨みが凝縮されるのだという。この時期は香ばしく焼きあげた秋鮭、新イクラ、銀杏を添えて。土鍋の中で織りなされる秋の味覚の共演は、この時期だけの美味。これを見て、足を運ばずにいられますか。