35歳のヤバい女：27歳が女のピークなんて、昭和の話でしょ？30代女が、若い女より俄然モテる理由(3/3)[東京カレンダー

屈辱のニュース

「で、どうなの。最近は。デートの近況聞かせてよ」

表参道の『CICADA』のテラス席にて、茜は2歳の息子のベビーカーを揺らしながら、前のめりに目を輝かせた。

数年前に結婚した長年の女友だち・茜は、昔は理恵子と同じように数多の男と浮名を流していたが、今ではイヤイヤ期真っ盛りの息子の子育てに忙殺されているため、他人のゴシップが何よりの大好物だ。

「うーん、あんまり変わってないわよ。昨日は桜田さんとデートして、今夜は香港の投資ファンドの男友だちが何人かで飲もうって言うから、とりあえずグランドハイアットで待ち合わせしてる。

明日は...医者の航平くんと久しぶりに会うわ。茜も覚えてるよね？アメリカに研修に行ってたけど、最近帰国したらしくて...」

理恵子は適当に最近のデート相手を報告したが、敦史のことだけは黙っていた。

というのも、敦史との出会いは茜の結婚式の二次会で、彼女の夫の知人であったからだ。隠すほどのことでもないが、余計な詮索をされたり、万一理恵子の他の男事情が流れても面倒だった。

「ほんと、理恵子って相変わらずモテモテ。全然老けもしないし、その秘訣を教えて欲しいわ」

そう言ってニコニコと微笑む茜は、独身時代と変わらないとはお世辞にも言えなかった。

つぶらな瞳が印象的な可愛い童顔は昔のままだが、睫毛やネイル、髪の毛のメンテナンスは明らかに怠っているし、いつ会っても同じような体系カバーを優先したデザインのマキシワンピースを着ている。

彼女の夫は外資系弁護士事務所のエリートで、稼ぎもかなりイイはずだが、生活費や茜の小遣いには厳しい男だと彼女はよく愚痴っていた。

他にも色々な要因があるのだろうが、専業主婦となった彼女に、その辺のアイドル顔負けの美少女だった頃の面影は皆無だ。

「そういえば、理恵子。聞いた？！」

すると茜は、突然何かを思い出したように、興奮気味に言った。

「敦史くん、電撃デキ婚するんだって！相手はまだ26歳の、CAさんだって！！」

「え...？」

理恵子は、耳を疑う。

敦史はつい2日前、理恵子といつものように夜を過ごしていたのだ。“デキ婚”なんて、何かの間違いだろう。

「ママー！ママぁぁぁー！」

そのとき、昼寝から目覚めた茜の息子が大声を上げた。

「はいはいはい...抱っこね。そうそう、それで敦史くんたらね、どうやら彼女に一目惚れして、出会ったその日に“結婚を前提に付き合ってください”なんて言ったらしいの。それで、2ヶ月後には彼女を妊娠させちゃって...」

茜は膝の上で海老反りで暴れる息子を押さえつけながら、聞いてもいないのに、ゴシップの詳細をペラペラと早口で語る。

「...敦史くんも、CAさんとか、若い女が好きなタイプだったのねぇ。意外だわ。ていうか、理恵子のそのバッグ素敵！またどこかのブランドの新作？」

「ヴァレクストラ」と答えた声が震えてしまったことに、茜は全く気づいていないのがせめてもの救いだった。

普段はうるさい子どもなんて大嫌いだが、この時ばかりは、自分の弱々しい声が茜の息子の奇声に掻き消されたことに感謝を覚えた。

後から思えば、敦史の結婚のニュースを聞いたときから、理恵子の人生の歯車が、少しずつ狂い始めたのだった。

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我慢できずに敦史を問い詰める理恵子に、衝撃の事実が...！