2018.05.23
二人の間で揺れる花嫁 Vol.3最高の夫
「それで、真子は…。俊さんと戻りたいの?」
圭一は小さな女の子に話しかけるような穏やかな口調で、真子に聞いた。
「ううん。やっぱり私には圭一しかいないって気がついた。これまでずっと、心のどこかで彼を忘れきれていなかったのかもしれない。けれど再会して、圭一が好きだって確信したの。…本当に、ごめんなさい」
自分勝手な言い分だと思ったが、これが正直な気持ちだった。けれどいくら優しい圭一でも、呆れられて見放されてしまうかもしれない。そう思うと、目を合わせられなかった。
「真子、顔をあげてこっちを見て」
圭一は真子の顔を両手で優しく包んだ。
「正直に話してくれてありがとう。…付き合う前からずっと、俊さんみたいになりたいって思っていたんだ。真子が忘れられないほど好きな人に。だから正直、少しだけ劣等感があった。
けれど、真子が俊さんと会って、その上で僕が良いって言ってくれて、本当に嬉しい。僕は僕で良いんだって素直に思える。
僕はどこにも行かないよ、一生一緒にいよう」
その言葉に、真子は涙が止まらなくなった。そして、一瞬でも迷ってしまっていた自分を恥じた。
これまで少し頼りないところがあると思っていたが、本当は自分より大人で、男らしい人なのだ。そんな圭一に、真子は、もう一度恋におちたのだった。
「ありがとう…。圭一、大好き」
そして、“宮崎俊”のLINEを、「さようなら」と呟きながらそっと消去した。
◆
挙式の後、『モアナ サーフライダー』の8階にあるパーティ会場に移った真子たちは、豪華な料理が並ぶテーブルに座っていた。この会場は完全個室で、料理もウエディング専用のフルコースが振舞われる。
チンチンチン…
皆が席に揃うと、真子の父がグラスにスプーンを当てて音を鳴らした。どこで知ったのか、海外風の挨拶の合図だ。
「では、新婦の父の私から簡単ながら挨拶を。本日はお日柄も良く遠路遥々お越し頂き…」
緊張した父に、真子の母が「短く済ませてね、ご飯が冷めちゃうから」と茶々を入れると、会場に笑いが起きた。その言葉で緊張が解れたのか、父はリラックスしながら挨拶を続けた。
「私は…実は初め、この結婚に反対していました。優しそうな圭一君に、少し頼りなさを感じてしまって。けれどその後、彼は何度も一人で私の元を訪れてきました。私が無視をしようが関係なく、です。
この根性に、私はすっかり彼を見直しました。圭一君は誰よりも男らしくて素敵な男性です。
真子、本当に良かったな、おめでとう!そして圭一君、明日のダイビングの約束、忘れてないよな?」
実は、真子と圭一が喧嘩している間も、圭一は時間を見つけては父の元を訪れていた。その後すっかり打ち解けた二人は、明日はダイビングに行く約束をしているようだ。
「じゃあ真子ちゃんとお母さんは、明日は買い物でも行きましょう!」
そう言ったのは圭一の母だ。真子はハワイに来てからすっかりと圭一の母や妹と打ち解けていた。
真子はこのハワイ挙式で、両家ともに本当の“家族”として、最高のスタートを切れた気がした。
「あ…。忘れてた。皆さん、グラスを持ちましたね?では、乾杯—!」
真子の父が慌てて乾杯の音頭を取る。それに合わせて皆が笑顔で乾杯をした。それは頭で描いていた理想以上の、素晴らしい光景だった。
真子はこの美しい瞬間をどうしても残したくなり、写真を撮ってInstagramにこう記した。
#モアナチャペル
#ハワイウエディング
#アールイズ・ウエディング
#最高の夫と
#最高の家族や友人と
#最高の結婚式
そしてパーティの後半には、会場から繋がる大きなテラスでケーキカットをした。テラスからは、美しいダイヤモンドヘッドが見える。皆、その景色をうっとりと眺めていた。
「真子、こっちにおいで、皆で写真撮ろう!」
圭一に手を握られて、ぎゅっとその手を握り返す。すると圭一は真子を見て愛おしそうに笑う。
その最高の笑顔を一生忘れないと心に誓いながら、子供ができたらまた皆でハワイに来たいな、と思った。
Fin.
真子がチェックした「アールイズ・ウエディング」のインスタグラムはこちらから>>
圭一がパンフレットを取り寄せた「アールイズ・ウエディング」の公式HPはこちらから>>
◆衣装協力:2P目女性/ブラウス¥14,000、パンツ¥17,000〈ともにミューニック/ピーチTEL:03-5411-2288〉男性/シャツ¥20,000〈デザインワークス/デザインワークス ドゥ・コート銀座店TEL:03-3562-8277〉、パンツ¥29,000〈ベルウィッチ/ビームス ハウス 丸の内TEL:03-5220-8686〉
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