住んでいるだけじゃダメなの?麻布十番在住の代理店マンが陥った十番の落とし穴って?

何度も商店街の石畳にピンヒールが挟まってつまずきながら歩いたことを思い出し、車内で一人微笑んだ。

あの食事会からしばらくたって、私は十番のタワマンで開催されるホームパーティーの手土産を探しに『NISSIN』を訪れた。


ここのワイン売り場は種類が豊富で、且つリーズナブルだからいい。今でも何かあった時は、ここのワイン売り場に来てしまうほど、私の中ではお気に入りのスポットになっている。

――オーストラリアのシャルドネにすべきか、カリフォルニアのカベルネにするべきか…。

真剣にワイン選びで悩んでいたところ、背後からどこかで聞いたような声がした。

「あれ? 玲奈さん?」

振り向くと、あの淳平君が立っている。その雰囲気はどこかサッパリとしており、以前会った時より男らしさが増している気がする。

「淳平君! そっか、この近くに住んでるんだもんね」

「玲奈さんの方こそ、ここでワインを買うなんて案外十番のこと知ってますね」

立ち話もそこそこにワインを持って下の階のレジへ行こうとしたところで、淳平君が急に真面目な顔になった。

「あの…。もし良ければ、今度僕とこの街で食事に行っていただけませんか?」

正直、驚いた。あまりにも突然だったから。でも、一生懸命な淳平君が可愛くて、私は”もちろん“と返事をしてその場を去った。

後日淳平君から送られてきたLINEには、駅近ながらもひっそりとした路地裏にある老舗の焼き鳥店『鳥善 瀬尾』のリンクが貼られていた。

路地裏にある焼き鳥店『鳥善 瀬尾』。高密度の備長炭を使用しているので煙も少なく、ふんわりジューシーに焼き上がる。上品な店内はデートに最適


約束の日、『鳥善 瀬尾』に向かうと淳平君は既に席に座っており、笑顔で出迎えてくれた。

初デートで、焼き鳥。

その選択肢が、私には嬉しかった。お互いの距離感がつかみづらい四角いテーブルのフレンチより、カウンター席で並んで食べる焼き鳥の方がずっと魅力的だ。

距離が縮められる気もするし、肩肘張らずに楽しめる感じも、東京で散々デートを繰り返してきた女性からすると心地良かった。

「なんか…淳平君、雰囲気変わった?」

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