恋の大三角形 Vol.12

恋の大三角形:「結婚したい」と言いながら結婚向きの男には惹かれない、女の矛盾

東京を生きる女たちは、もう気がついている。

「素敵な男の隣には、既に女がいる」という事実に。

自分が好きになるくらいの男を、他の目ざとい女たちが見過ごすはずがないのだ。

繭子は商社勤務の洋平と付き合って2年になるが、彼からプロポーズの気配がなく、他の女の影を感じて彼に嘘の予定を告げ、深夜に我を忘れて洋平を待ち伏せる

帰宅した洋平は繭子を優しく宥め、その後ふたりの関係は改善したように思われたが、30歳の誕生日に「まだ結婚は考えられない」とはっきり言われてしまう。

繭子は洋平との別れを考え始め、駆け引きのつもりで「結婚できないなら別れる」と告げたところ、洋平はあっさり「わかった」と引き下がってしまった。


すれ違う心


−私、洋平と別れたの…?

すっかり色を失ってしまった世界から目を背けるように、無気力に目の前のPCを見つめる。

一晩明けても、私はその事実を未だ受け容れられずにいた。

「“わかった”って…。私たち、これで終わりなの?」

引き止めて欲しかった。引き止めてくれると思っていた。それなのに…。

私の問いにも、洋平はただ気まずそうに黙って俯くだけ。

鍋がぐつぐつと煮立つ音だけが響く空間に居た堪れなくなった私は、ソファに置かれたバッグを掴み、逃げるようにして家を飛び出したのだった。


「小柳さん。あのぅ…昨日のメールって、読んでいただけましたか?」

ふいに背後から私を呼ぶ声がして、ゆっくりと振り返る。

筋肉質な体がすぐそばにあり、見上げると、角ばった顔を蒸気させた日高さんが落ち着かない様子で立っていた。

「メール…?」

そう口走ってから、そういえば彼からデートに誘われていたのだった、とようやく思い出す。

「ああ、えっと…映画、でしたっけ?」

−こんな精神状態で、日高さんとデートなんて…絶対無理。

私は、なんて間の悪い男なのだろうかと改めて呆れ、続く言葉を探した。

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