誘われない女:「何で、あの女と…?」チヤホヤされる同期が、許せない。嫉妬に駆られた女のもくろみ
正直、さとみと同じ化粧品を使うなんて負けを認めるような気もしていたのだが、鏡に映る夏希はさとみとも違う、生き生きとしたオーラを放っていた。
すっかり見違えた姿にテンションが上がり、夏希は急に誰かに会いたくなった。今日、孝之は何をしているのだろうか。
しかしLINEのトークルームを開いたところで、手を止めた。
せっかく綺麗になった姿を見せるのだから、自分を無下に扱った孝之では惜しい。さとみと食事へ行ったことへの当てつけのような気持ちが、今になってムクムクと湧いてきたのだ。
トークルームをスクロールしていると、この間の食事会のグループLINEが目についた。それを見て、光一のことを思い出した。
光一は夏希にしきりに話しかけてきて、3人いた男性の中で唯一、さとみに連絡しなかった男である。
◆
「まさか、夏希ちゃんから連絡をくれるなんて、ラッキーだな」
3時間後、運良く予約できたという『ティエリー・マルクス』で、夏希は光一と向かい合っていた。
「あの日、実は夏希ちゃんのこといいなって思ってたんだけど…。なんか話しかけづらい雰囲気で、誘えなかったんだよね」
光一は恥ずかしそうに、そう言った。
「今日は、この間とイメージ違うね。この間も素敵だったけど、今日の方が全然いいよ」
光一はエリートサラリーマンらしく、ラフな休日の服装も一目で上質と分かるものである。話も洗練されていて、面白い。夏希はワインを飲みながら、いつも以上にたくさん笑った。
今までどうしても強がってしまう自分が、光一といると不思議と穏やかな気持ちでいられるのだ。
―夏希、今何してる?この間はすぐ寝ちゃって、ごめんな。ゆっくり飯でも食おーぜ。
孝之からのメッセージが届いたとき、夏希は携帯をそっと裏返した。
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生まれ変わった夏希に、さらなる変化が…?
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