2017.10.26
渋谷マークシティの腹部で、ぽっかりと口を開く、京王井の頭線・西口。改札を出てすぐ、左手正面の角に、まるで漁り火のようにぼんやり灯る赤提灯がある。
変わりゆく渋谷にあって、69年もの間、光を放ち続ける『焼鳥 森本』。17時の開店と同時に、魅力を知る老若男女が、どんどんと吸い込まれていく。縄のれんの向こうへ。
歴史が育み、継承された別格の美味と、最高の接客
選んで正解。レバ刺しを食べると、いつもそう思う。ねっとりとした舌触りに、強い旨み、後味はスッキリ。
酢橘や山葵、青ねぎの威力も絶大だ。そして、東京軍鶏を筆頭に、種々の部位が揃う焼鳥もまた然り。
多くの焼鳥屋が軒を連ね、芳しい煙の香りに打ちのめされる界隈にあって、別格と断言できる完成度を堅持している。ありがとう。
変わらないことの素晴らしさに思わず感謝したくなる、渋谷では希有な存在だ。
「始めは道玄坂でドジョウや鰻を捌いて売る露店だったみたい」 営業中、ずっと炭火の前に立ち、四角い渋団扇を煽ぎ続ける渡部邦義さんは言う。
初代が露店を開いたのは昭和23年。だから、今年で69年。創業からほどなく、駅前にある三菱東京UFJ銀行付近で葦簾(よしず)の屋台に。焼鳥を食べさせるようになったという。
今も元祖を謳い、来たら必ず食べるべき、つくねは初代の考案。戦後間もなくで、肉質の固い鳥も出回っていた当時、「どうやって美味しく食べさせるか」と、苦心の末に誕生した一串だ。
粉や卵などのつなぎは一切使わず、鳥以外はジューシーさを醸すための玉ねぎと清涼感を生む柚子のみ。凝縮された旨みが脳裏に甦る。
「店になったのは今から60年ぐらい前。あっち側にレンガビルってあるでしょ? あの場所に移ったときで、その頃の屋号は『弁天亭』。前を行く道が弁天通りになるぐらい名物店だったそうだよ」
渡部さんは3代目。昭和47年に『弁天亭』は今の角地に移り、『森本』を名乗るようになったが、それから6年経った昭和53年に従業員として勤め始めた。
移転を決行し、自身の名を店に冠した2代目から「店を継いで欲しい」と頼まれたのは今から12年ほど前。
「引退した先代? お元気だよ。女将は、今も店にいらっしゃる」
いつもの光景を思い出し、それで合点が行った。訪れるといつも優しい笑顔で「いらっしゃいませ」、帰る客ひとりひとりに「また来て下さい。
ありがとうございました」と丁寧に頭を下げる、あの女性が先代の女将だったのだ。
この記事で紹介したお店
うなぎ・焼鳥 渋谷森本
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