私たち、騙された? Vol.6

大企業ブランドは、通用しない。“転職=年収ダウン”の厳しい現実に戸惑う大手商社OL

「大企業に入れば、一生安泰」

昔からそう教えられて育ってきた。

有名大学を卒業し、誰もが知っている大企業に入社。

安定した生活を送り、結婚し子供を育て、定年後は年金と退職金で優雅に暮らす。それが一番の幸せだ、と。

丸の内にある大手総合商社に勤める美貴(26)も、そう信じてきたうちの一人。

会社にいる同じ一般職の先輩たちを見ながら、「彼女たちのようになりたくない」とキャリアに悩む美貴

そんなときメガバンク勤務の彼氏・優太があっさり「結婚を考えて、安定している今の会社に残る」と言い放ち、違和感を覚える。

現状を変えたいと思っているのは、優太ではなく自分だ、と自覚した美貴がついに奮起する。


水曜日の19時。美貴は仕事をきっちり定時で終わらせ、東京八重洲口に向かっていた。

周りに転職活動だと気づかれないようを意識しつつ、普段あまり着ないきれいめな黒のジャケットにグレーのパンツ姿で、大手転職エージェントのオフィスを目がけて歩いた。

受付で待っていると、40代前半くらいの少しふっくらとした菅野美穂似の女性に名前を呼ばれた。

担当の女性は、小さいペットボトルのお水を美貴に差し出すと、早速今の仕事について、希望条件について、事細かに聞いてきた。

「このご経験ですと、ご希望の条件は難しいかと。」

美貴が一通り話し終えた後、担当のキャリアアドバイザーがピシャリと言い放った一言に、反射的に声が出る。

「そうですね…大きなキャリアチェンジとなると、年収ダウンや中小企業への転職になることは避けられないと思います。」

美貴の希望条件は、年収維持・興味のある食品関連の仕事という2つだけだ。それでも難しいと言われる現実に衝撃を受ける。

「美貴さんは食品関連のお仕事は未経験ですので…商社の一般職というご経験から考え、このあたりはいかがでしょうか?」

ーどれも知らない企業ばかり…。

キャリアアドバイザーが「ちょっとお待ちください。」と5分程席を外した後に持ってきた求人票に載っていたのは、どれも知らない企業の名前ばかりだった。

ーさすがに、名前も知らない企業は候補から外そうかな…。

あんなに意を決して転職サイトに登録したはずなのに、並べられた求人票を見ると尻込みしてしまい、美貴はまだまだ「大企業ブランド」を捨てられない自分の弱さを痛感するのであった。

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