2011.10.21
次世代を牽引する若手実力派 Vol.5こだわりの食材と匠の技から生まれる繊細なる広東料理
飾りっ気なしの直球勝負。新展開の象徴的ひと皿
小振りの土鍋を開けると、立ち上るのは紹興酒と八角やショウガ、山椒の香り。じっくり煮込まれた骨付き鶏を口に含むと、今度は肉と酒の深い旨みに陳皮が爽やかなアクセントを加えているのが分かる。
「飾りっ気なしの、伝統的上海料理。これが、今度の僕の道しるべだよ」とほくそ笑むシェフ。華やかなモダンチャイニーズの旗手として確固たる世界観を築いた脇屋友詞氏の、次なる一手は、意外なほどに直球だった。
東京ミッドタウンの裏手、赤坂中学校にほど近く、『Wakiya一笑美茶樓』からも至近距離に、この10月『トゥーランドット臥龍居』はオープンした。平日は朝7時から深夜3時までノンストップ営業。早朝は粥、昼と夜はアラカルトが主体、深夜は野菜多めのメニューを提供と、東京の街と人々のニーズに合わせて柔軟な対応を取る。
「気軽に、いつでも。それが今の時代が求めるものでしょ?」
その通り。朝早くから活動する人が増えた一方で、夜が深い人種は今もって多い。だが強欲で待ったなしの胃袋は、ファストではないものを望んでる。
「本当は24時間営業も考えたんだけど(笑)。まあ、最初から飛ばすことはないよね」
思い立ってふらりと訪れるお客を思えば、自ずと料理はシンプルになる。ストレートな上海料理らしい強い旨みは大切にしつつも、ひと皿のボリュームと価格はあえて控えめ。少人数でも多皿が楽しめる仕組みは、街の日常にきちんと溶け込む造りだ。深夜メニューを野菜主体に絞り込んだのは、脇屋氏自身が身をもって必要と感じたゆえ。
「僕自身の身体が、それを求めるようになったから。深夜の空腹はいやだけど、がっつり麺をかき込んで翌朝に響くのは避けたい。そんな風に変わったんだ」
頭で考えて動くより、感覚に忠実な方が絶対に正しい。何故って、食欲は生きる根幹だから。朝から晩まで、美味しいを、ちゃんと、ずっと。2011年の東京は今まで以上にわがままだから、こんな店を、待っていた。
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