2017.09.30
ここ丸の内には、東京、否、日本屈指のグランドメゾンがある。その名は『アピシウス』。1983年に生まれた同店は、以降フランス料理界を牽引するレストランとして君臨してきた。
一体何が、『アピシウス』を一流たらしめているのか。その歴史と現在とを、じっくりと紐解いてみよう。
本物を追求する二人の男が名店を作った
『アピシウス』
今から遡ること36年前。1983年4月、丸の内仲通りに面したビルの地下に、一軒のフランス料理店がオープンした。店の名は『アピシウス』。「APICIUS」とは、古代ローマ時代の料理人で美食家として知られた、マルクス・ガビウス・アピキウスに因んでいる。
アール・ヌーヴォー様式に則った空間は、贅を凝らした、という形容が実に相応しい。玄関の扉を入ってエントランスホールを抜け、ウェイティングバーを横目に見ながらメインダイニングへ……という優美なアプローチが、さきほどまでの日常と、これから始まる非日常的な時間とを、鮮やかに線引きしてくれる。
初代オーナーは、ベンディングマシンの運営会社である、株式会社アペックスの2代目社長、森 一氏。深い教養と広い人脈を持ち、作家・石原慎太郎をもってして「最後の遊び人」と言わしめたという逸話もある紳士は、物の本によると相当に豪放磊落な人物だったらしい。
アラスカに別荘を所有し、その地を訪れれば釣りやダイビング、狩猟を楽しみ、ジビエの季節になると北海道で蝦夷鹿を仕留めて店に送っていた(現在、ウェイティングバーの壁に飾られているライフル銃は森氏の愛用品)。
そして、そうした時間を多く共有したのが、作家・開高健なのだそう。氏は店の常連でもあり、ウェイティングバーで食事の前にマティーニを味わうのが常だったとか。さぞや華やかな男たちの社交が、毎夜繰り広げられていたのだろう。
また、森氏は芸術もこよなく愛した。店内に飾られている数々の絵画はすべて、原画。マルク・シャガール、アンドリュー・ワイエス、ベルナール・ビュッフェ、モーリス・ユトリロ、ポール・ギヤマンetc.、いずれも、氏の蒐集品だ。
本物を追求するその姿勢は、食材にも及んだ。
養殖ものの海産物や、冷凍品などを使わないのはもちろんだし、フランスから本物の素材を輸入するだけでは飽き足らず、30年前には希少だったサウスダウン種の羊や真鴨、カナディアングースや鳩といった肉類、西洋野菜などを鮮度のいい状態で安定的に入手できるようにと、オホーツク海を望める北海道・紋別の広大な土地に自社経営の「オホーツクランチ牧場」と農場を開設。
敷地面積は、約10万坪。「ほしいものが手に入らないなら育てよう」と考える者は、ほかにも存在するかもしれないが、これほどのスケールの話は、後にも先にも聞いたことがない。
そうした最良の食材を手に『アピシウス』の料理の礎を築いたのが、初代料理長・高橋徳男氏だ。1953年創業の福岡の名店『レストラン花の木』での修業を振り出しに、当時の有名フレンチを経て、渡仏。
『トロワグロ』、『ラ・セール』などで経験を積んだ4年間のフランス修業より帰国後は、代官山『レンガ屋』、青山『ラ・マレ』のシェフを務めた後、この店の厨房を任されることに。
森氏と共に「日本一のレストランを作る」という目標を掲げ、あらゆる面において妥協をしなかった。生前、高橋シェフにインタビューをした際にも「料理人はいい素材がないと良い料理が作れないということを、オーナーはよく理解してくれていた」と述話していた。
そういえば、シェフは著書『贅沢の応用』(中央公論社)で「フランス料理に蝦夷鹿を使ったのは、恐らくアピシウスが初めてだったのではないか」と、記している。それはもしかしたら、前述した「森氏が仕留めた蝦夷鹿」だったのではないだろうか。
また後には、農場で飼育も試みていたという。現在、蝦夷鹿がレストランでおなじみの素材になったのは、二人の存在があったからこそ、と言っても過言ではない気がする。
この記事で紹介したお店
アピシウス
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