港区男子。
普通のサラリーマンでは考えられないほどの年収や地位を(若くして)手にし、港区で生活する者のことだ。
しかし、全てを手にしているかのように見える彼らが、必ずしも幸せとは限らない。
高い報酬と引き換えに、常人では考えられないような、神経をすり減らした日々を送っているのだ。
華やかな世界に住まう男たちの、光と“影”。その実態とは?
<今週の港区男子>
名前:博人
年齢:28歳
職業:外資系証券会社勤務
住居:ザ・パークハウス西麻布
年収:2,000万
女性を口説く暇などない?外銀男の社内接待の一幕
「あ、もしもし?今からマンシーズ来れない?」
麻布十番『マンシーズ トウキョウ』の廊下で、博人は忙しなく電話をかけている。
高級スーツに、第二ボタンまで開けたドレスシャツ。真っ白のシャツは、赤ワインで少し汚れてしまった。
「今日は役員のバースデーだから、マリみたいな可愛い子に来てほしいんだよね」
名前を変えて同じセリフをもう10回ほど繰り返したところで、ようやく美女2人が現れた。胸もとを少し露わにした、夜の港区にぴったりな華やかな美女だ。
「ヒロトくーん!」
「お!リカちゃん!来てくれてありがとう!さすが友達も可愛いね、助かるよ」
リカは雑誌の表紙になったこともある、グラビアアイドルだ。隣の子も、見たことがある顔だった。きっとアイドル仲間だろう。
博人は得意げな顔で、スタイル抜群な美女を引き連れ部屋に戻った。
今日の主役である40代の黒光りした男(博人の会社の役員である)がニヤリと目配せすると、主役の隣にいた女子大生をどかし、リカたちを誘導した。
主役の両隣りには、一番いい女を座らせる。20代のペーペーである博人たちはアテンドに徹する。一番いい女を連れてきた男が評価され、可愛がられるのだ。
美女を呼べないと仕事ができない奴と評価され、飲み会に呼ばれなくなるどころか、仕事にも支障がでる。女性を口説く暇などなく、シャンパンを一気し、カラオケで場を盛り上げるのだ。
女子大生、グラビアアイドル、モデル、女子アナ、一流企業OL、CAなどさまざまな美女がずらりと並んでいる。
今のところ博人の呼んだリカが一番可愛く、主役はご機嫌な様子でリカと腕を絡ませながら、シャンパンで乾杯していた。
自分が呼んだ可愛い女が、上司のおじさんたちと飲んでいる姿を毎晩見ていると、こんなに美女が溢れているというのに、誰に対しても恋愛感情は湧かなくなる。
―みんなどうせ、タクシー代目当てで来ている港区女子たちだ…。
すると突然、一人の女性が入って来た。
「遅れてごめんなさい」
カオスと化した飲みの場の視線が、一斉にドアに注がれた。
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