東京美食MAP 10の街 青山、通のための和食 Vol.2

セイゾロイザカ ソバ ギンセイ

勢揃坂 蕎 ぎん清

地元で愛される店を目指して、弛まぬ努力を続ける

店主の銀次氏と女将、昔からの友人という3人で店を切り盛り。カウンター奥には友人が沖縄で買った招き猫の額も飾られている

人懐っこい笑顔にグイグイ引き込まれる。店主の銀次氏は不思議な魅力に満ちた人だ。どうして蕎麦屋を始めたか、尋ねると「子供からお年寄りまで、みーんなが食べられる。それに、どこに行ってもできるからね、東京じゃなくって田舎でも」。そう言って、また破顔一笑。思わずこちらも笑顔になる。

銀次氏の経歴はかなり異色。「和食への転職を考えてから10年はかなり紆余曲折だった」と言うが、その間、ちゃんこ料理屋でフグの調理師免許を取得した。転職前はバーテンダーで、今でもオリジナルカクテルを作る。バーテンダーになる前は何とフレンチレストランにいた。気の利いた蕎麦前が揃うのはこうした経験があるからだろう。

蕎麦のこだわりは?と聞けば「一生懸命やってるだけ。蕎麦は蕎麦。庶民の食べ物!」。どこどこ産の粉で、生粉打ちで、と能書きがまず先にある蕎麦屋が多い今日にあって銀次氏はここでも個性的。しかし、その蕎麦は細打ちで香り高く、出汁との一体感に配慮した二八。石臼挽きで自家製粉し、季節に応じた「旬そば」も考案している。食材だって思うところがあって、自身の出身地である伊勢と、女将の出身地である福島から取っている。

「意外とご年配のお客様が多い立地でね。やっと最近、褒められるようになってきた」かつては鎌倉街道だった由緒ある小道で、愉快に、そして実直に銀次氏は腕を揮う。

左.三重県産大あさりのそば味噌焼き¥1,000~。焦げた味噌も香ばしく、酒のアテにも最高の品

右.福島の酒肴三品と福島の銘酒三種¥1,000。にしんの山椒漬といった珍味を、国権などの酒と

トマト蕎麦¥800。夏の旬そば。見事な一体感で、トマトが水っぽくならない工夫も施されている

カラフルな南部鉄器でそば湯を提供。湯桶よりも気の利いたものを探していて見つけ、採用した

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