出世の花道 Vol.6

出世の花道:大した成果は出さずとも、上司に気に入られているだけで出世する男の葛藤

出世したい―。

サラリーマンである以上、組織の上層部を狙うのは当然のこと。

だが、仕事で結果をだすことと、出世することは、イコールではない。

そんな理不尽がまかり通るのが、この世の中だ。

出世競争に翻弄される、大手出版社同期の2人。

果たして、サラリーマンとして恵まれているのは、どちらだろうか。


秋吉直樹(34歳)は同期の武田壮介と偶然遭遇し一緒に飲むことに。そこで、武田から思いがけない言葉を言われて驚く直樹だった。


「お前が、死ぬほど羨ましくなることがあるんだよ」

『十六公厘』で、直樹の目の前に座る武田が呟いた。

酒に酔い、半分目が座った状態だ。だからこそ、武田の言葉は直樹に響いた。

普段言えないような本音を、酒の勢いを借りて吐き出したのだろう。

「何言ってるんだよ、武田。お前は石原部長という大きな後ろ盾があるし、出世コースにも乗ってるじゃないか」

たとえ自分のことを羨んでいたとしても、客観的に見て社会人として恵まれているのは武田の方だ。

「それはどうもありがとう」なんて馬鹿正直に武田の言葉を喜ぶ気には、当たり前だが到底なれない。

直樹の反論を、武田はがくりと頭を垂らして聞いていた。

一瞬寝てしまったのかと思い顔をのぞき込んだが、武田の目はしっかりと開いていた。

武田は、しばらくの沈黙のあとゆっくり頭を起こし、今度はぽかんと口を開けて天井を見上げた。

その焦点は定まっているのか、いないのか、直樹にはよく見えなかった。

「俺はなあ……」

顔と天井を平行にしたままの武田が口を開いた。

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