定時帰りの、腰掛けOLたち。
楽な仕事に給湯室での井戸端会議、充実したアフターファイブ。
”安定”という鎧を手に入れた彼女たちは保守的で、誰かが幸せにしてくれるのを待っている。
丸の内の大手損保会社に勤める愛華(26)も、その一人。典型的な腰掛けOLである彼女には、実はこんなあだ名がある。
“にゃんにゃんOL”、と。
この物語は、元OLで現在はWebショップオーナーであるアリサ(29)の、“にゃんにゃんOL”観察日記である。
華の丸の内OLですが、何か?
「アリサさん、聞いてくださいよ。昨日の食事会、相手が商社マンだったんだけど、二千円も徴収されちゃって。」
目の前で、頬をぷぅっと膨らませながら昨日の(多分大した実りもないであろう)食事会の報告を一生懸命している愛華。
丸の内の損保会社に勤める26歳で、将来の夢は“有名企業に勤める高年収の人と結婚して、幸せな家庭を築くこと"(そのまま旦那の仕事で海外に住み、駐妻になれたらラッキー)。
「そうなんだ。その二千円に何の意味があるんだろうね。」
グラスに水滴がついたアイスティーを飲みながら、アリサは改めて愛華を見つめてしまう。
愛華は、大学時代の3つ下の後輩である。
きちんと手入れされた肌は雪のように白くて美しい。背はそこまで高くないものの、日頃の食事制限のおかげなのか、綺麗な脚をしている。
テニスサークルが一緒だったが、昔から彼女は、読者モデルに妙な憧れを持っており、ファッション雑誌を熟読しているようなタイプだった。
ふんわりとしたスカートやワンピースを好む愛華と対照的に、毎日デニムや派手な色が多く、顔も濃いアリサ。仲が良いのを不思議がる人がいるのも納得だ。
「愛華って、毎日食事会へ行ってない?」
愛華は毎晩...特に週末は、常にそんな会へ顔を出しているイメージがある。
「毎晩じゃないですよぉ。火曜は料理教室、水曜はフランス語のレッスンで忙しいんだから。」
―出た!典型的な、腰掛け“にゃんにゃんOL”のアフターファイブの過ごし方だ。
“にゃんにゃんOL”は大概、習い事に精を出しており、料理教室かポーセラーツ教室に通っている。
そして英語かフランス語も必ずと言っていいほど勉強中。(しかしほぼ身になっていない)。
「そっか。で、結局愛華はどうしたいの?」
ここ最近、愛華に会うたびに聞いている質問だ。
でも、明確な答えは永遠に得られていない。
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