洋食の聖地、銀座に21世紀のハイカラ来たる
本当にクリームは入ってない?牛乳や出汁も?コースの最初、突き出しとして出てきた小さなひと口。メニューには「枝豆の冷たいスープ」と記されているが、正確にいうと日本料理のすり流しである。そのなんと滑らかで、旨み濃いことか。これが塩茹でした枝豆と水だけでできているなんて、誰に想像できるだろう。
「あたり鉢で当たると粒子が丸くなるんです。ミキサーではダメなんです」オーナーシェフ、玉木裕氏は美味しさの秘密を知っている。それもたくさん。フランス料理からスタートし、表参道『重よし』で3年間、日本料理も修業した氏が作るのは、日仏いいとこどりの結晶、玉木流の洋食だ。日本のレストラン史から鑑みて、銀座ほど洋食がしっくりくる街はない。広尾から拠点を移した玉木氏はいわば、洋食の聖地に来るべくして来た人なのだ。
料理に潜む和食の軽やかさとフレンチの濃縮した旨みは「神戸牛100%のメンチカツ」で最高潮に達する。刺身のように和包丁で引けば、キャベツの千切りはここまでみずみずしくなれるのかと、脇役ですらこのレベル。デミグラスソースを衣がたっぷり吸ったメンチカツは聖地の歴史を塗り替えた。新時代の幕は今、上がったばかりだ。