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  • たった1人の女 Vol.2

    たった1人の女:ホテルのプールで出会ってしまった男女の、夏の恋の危うい結末

    麻友と付き合うのに、時間はかからなかった。

    外資系メーカーで働く、29歳の麻友。年齢の割には落ち着いており、大人の女性だけが持つ品と色気をすでに兼ね備えていた。

    智弘の方が5歳も年上なのに、レストランを選ぶ時も何かを買う時も、麻友の方が率先して決めた。

    その関係が智弘にとっては心地良く、麻友の隣にいることで安らいだ。それは、今まで付き合ってきた女性たちには感じたことのない、特別な感覚だった。


    波長が合う、なんてそんなありふれた言葉では片付けたくないような、それくらい特別な何かだ。

    留学を終えて日本に戻ってきた幼馴染・翔太の帰国パーティーにも、麻友を連れて行った。

    智弘は小学校受験を経て私立の学校に入り、大学までエスカレーター式に進学した。そのため小学校からの友人との絆は強い。翔太も雅基もそのメンバーだ。

    「智弘。お前が彼女連れてくるとか珍しいな」

    麻友が席を外した隙に、翔太が耳打ちしてきた。

    今まで付き合ってきた女性は沢山いる。だが、彼女としてこの仲間たちに紹介したのは、ごくわずかだ。だから智弘にとって麻友がいかに大切な存在であるか、彼らはすぐに気付いた。

    「あ、翔太くん。アメリカでのお話、ゆっくり聞かせてください」

    戻ってきた麻友が、智弘の隣に座りながら言った。

    「麻友、それより翔太がアメリカに行った本当の理由を聞いてやってよ。彼女にフラれて半分ヤケを起こして行ったんだから」

    横から智弘が茶化すように言うと、麻友は不思議そうな顔をし、翔太は「やめろよ」と言って笑った。

    「そんなことより麻友ちゃん。麻友ちゃんはレストラン巡りと旅行が好きなんだって?智弘に、ちゃんと美味しいレストランに連れて行ってもらってる?」

    そう翔太に聞かれて「そうですねぇ~」と楽しそうに答える麻友を見ながら、智弘は何とも言えない幸福感を味わった。

    愛する女性が、親友たちとすぐに打ち解けてくれたことが何よりも嬉しかった。

    きっとこんな時間が、1年後も5年後も、もっと先も続いていく―。

    その日を迎えるまで、智弘は信じて疑わなかった。



    「なあ麻友、俺さ新しくクレジットカード作ろうと思うんだけど、どう思う?」

    ある日のデートでふと思い出し、智弘は聞いてみた。

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