2024.04.25
離婚カレンダー〜夫婦の正しい終わり方〜 Vol.3◆
週末がやってきた。
落ち込むことばかりの1週間だったが、考えたり、調べたりすることは山のようにあった。
純香と晴子のアドバイスに従って、法務局に出向いたりもした。ローンの有無は、法務局で登記簿を取れば誰にでも調べられるものなのだという。
思いのほかあっさりと取れた登記簿を見ると、今住んでいる物件の所有者は光朗で、ローンはない物件であることがわかった。
もし本当に離婚になったとしても、「ローンがなければ、離婚後にマンションを売ったときの売却益の半分程度をそのまま財産分与でもらえるはず」と純香が言っていた。
とりあえず、残ったローンで資産が相殺されてしまうという心配はなさそうだ。その事実だけで、楓の気持ちが幾分か軽くなったのは間違いない。
ここ最近の娘の花奈の様子が、パパがいなくなったことに慣れ始めているように見えるのも救いだった。しかし、小さい子どもの心は、親が思う以上に傷ついているかもしれない。
そんななかでの妹・麻美の訪問は、楓にとっても花奈にとっても嬉しいものだった。
「花奈ちゃん、今日はたくさん遊ぼうね!」
大喜びの花奈は、早速隣の部屋におもちゃをとりに向かう。その隙に、楓は光朗が家を出たことを打ち明けた。
「えー、やっぱそうなんだ。なんか最近様子がおかしいって思ってたんだよね」
「なんで気づいたの??」
楓が聞くと、麻美はいくつかの理由をあげた。
「やっぱ一番は、お姉ちゃんのテンションの低さ。あとは、以前は家はきちんと片付いていたのに、最近雑多な感じがして。いや、別に十分きれいなんだけどさ」
「そっか。バレちゃってたんだ。実は、先日光朗さんに、離婚はしたくないって伝えたんだよね。
そしたら、なんて言ったと思う?」
麻美は少し考えてから、遠慮がちに言った。
「他に好きな人がいる」
「ううん、全然違う」
楓は、光朗の返信の内容を打ち明けた。すると麻美は、すぐさま怒りを露わにする。
「信じられない。自分の子どもを産んでくれた妻に向かって、そんなこと言うなんて!」
「私、女として見れないほど、見た目は変わってないと思うんだけどなぁ…」
楓が呟くように言うと、麻美も同意した。
「出産も子育ても大変なのに、その上、異性として魅力的であることを求められるなんて…。私、ますます結婚への夢がなくなっちゃうな」
◆
翌朝。
花奈を幼稚園に送ると、晴子が門の前で楓たちが登園するのを待っていた。
「今日、これから仕事なんだけど、楓さんがどうなったか気になっちゃって」
「ごめーん!LINEしようと思ってたの。実は、いろいろあってね」
楓は、先生に花奈を預け、「楽しんでね」と手を振った。
「あそこには行ったの?」
晴子に聞かれ、楓は周りを気にしながら答えた。
「行ったよ。探偵さんからいろいろお話を伺っているうちに、うちの夫は浮気してるんだろうな、って確信したわ」
「そっか。それは残念だけど…。また近々じっくり話聞きたいな」
そう言うと、晴子は足早に立ち去って行った。彼女の後ろ姿を見送りつつ、楓も家に戻る。
こんな時でさえ楓の頭の中は、夫が出て行った理由や、これから先の不安でいっぱいだった。
マンションに着くと、ため息交じりにポストを開け、郵便物を取り出す。また夫からの郵便物がないか、ドキドキしながら。
しかし、楓を不安にさせるような封書は何も紛れていなかった。
密かに胸を撫で下ろし、エレベーターで居住階まで上がり、ドアに鍵をタッチする。
「あれ?私、開けっぱなしで出かけてた?」
鍵がかかっていなかったことを不審に思い、楓は不安げにドアを開いた。
玄関には、見慣れた革靴が一足ある。
条件反射的に、楓は履いていたフラットシューズを脱ぎ捨て、リビングに急いだ。すると…。
そこには、楓の突然の帰宅に、動きを止め佇む人物がいた。
「光朗さん…」
久しぶりに見る夫の姿に、楓は言葉を失った。
▶前回:北参道のタワマンに住む34歳主婦。結婚5年、突然の離婚危機で直面した金銭問題とは
▶1話目はこちら:結婚5年。ある日突然、夫が突然家を出たワケ
▶NEXT:5月2日 木曜更新予定
夫が語る。どうしても離婚したかった本当の理由とは?
ポストに入っていたダンナからの手紙を開封したら離婚届でびっくりした際、妹の麻美は目の前にいたと思ったけど…
その時、有明にマンション借りて帰って来なくなったと話さなかったっけ?
探偵のイケオジに促されて、夫の怪しい行動を思い出して、ようやく今になってもやもやが確信に変わったって?いや遅過ぎると思うけど😂😂 どこまでぼんやりなの、楓は。
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