ホムパのお作法 Vol.1

ホムパのお作法:会話を盛り上げるだけでは不十分。見られている、家主の品格

自ら会話の舵を切り、皆を盛り上げるのがもてなす側の流儀?


前回参加したのは、西麻布の交差点にほど近いタワーマンションの一室で行われた会だった。

主催者は42歳・独身の平田。職業は医師だ。

家に上がると、革張りの大きなソファーが目に入った。家の広さは約80㎡弱。リビングは約30㎡くらいだろうか。

女性4名、男性5名の会だった。

白シャツに黒のジレを着ていた平田は、人の良さそうな雰囲気を醸し出す。ずらりと並ぶ顔ぶれも皆上品で、この界隈でもそれなりに遊んでいるであろう人たちだ。

「最初はシャンパンから飲もうか。誰かグラスをキッチンから持ってきてもらえるかな?」

平田の一声で、そそくさと女性二人が動く。

それにつられるかの如く、残りの人たちはテーブルの上に置いてあった(オーダーしたと思われる)お寿司やサラダをパックから取り出し、お皿を並べる。

まるで皆の共同作業のようなその光景。しかしその間、平田は隣に座る女性とのお喋りに夢中だった。


平田は率先して話を振ってくれた。

「沙耶加ちゃんは、商社勤務だよね?別の会で知り合ったんだけど、この界隈では顔が広くて有名だから、みんな繋がっておいたほうがいいよ。」

冗談を交えながらも皆を紹介し、平田自らが輪の中心となり会話が進んでいく。そして次第に、各々楽しそうに談笑を始めた。

何の問題もなく、スムーズに時間は流れる。しかし、中盤から気になって仕方がないことがあった。


—溜まりゆくグラス、汚れていくお皿...


食べ終わった後のお皿が、ダイニングテーブルの隅に次々とミルフィーユ状に重ねられていく。

女性陣のリップの跡がついた、飲み終わったグラスが無造作に散乱し始め、新しい飲み物用のグラスも底をついてきた。

「平田さん、もうグラスがなくなりそうです。」

見兼ねて平田に話しかけるが、家主が動く気配は全くない。

「あ、じゃあ各自で適当に洗ってくれるかな?それより、面白い話があってさ...」

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