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  • ただの商社マンじゃダメなの。目黒に大きな実家を持つ商社マンを選んでいた女の、心変わり

    新たに出会った、今までにいないタイプの男


    最初の頃は「結婚したいね」と軽く言っていた彼も、付き合って半年が過ぎる頃には結婚のけの字も口にしなくなり、あっけなく別れるに至った。

    彼はもともと、本気で結婚を考えていたわけではなかったのだ。

    落ち込むちえみを見かねて、里穂が誘ってくれた食事会。そこで征二と出会った。

    征二は今までちえみが好きになっていたような男性とは違うタイプで、銀座にある大手監査法人でシニアマネージャーをしている29歳。

    整った顔ではあるが素朴な雰囲気を漂わせ、食事会にいた男性の中で特に興味を引かれるタイプではなかった。

    初めてのデートは、可もなく不可もなくといったところ。そして昨夜、2回目のデートに誘われた。

    「どうしよう、里穂。征二くんからドライブデートに誘われたんだけど」

    「へえ、行けばいいじゃない。どうせ予定もないでしょ?」

    里穂に相談すると、あっさりそう言われてしまった。

    「でもさあ里穂、征二くんって悪くはないんだけど、ちょっと地味じゃない?」

    「そお?親しみやすさがあって良いと思うけど。あ、でもちえみが求める“最高の人”とはちょっと違うかもね」

    ちえみが求めているのは、スタイリッシュで、ちょっと遊び慣れた雰囲気があり、東京のど真ん中で生まれ育った人。熊本出身の征二は、条件的に圏外なのだ。

    「深く考えずに行きなよ。ほら、今、返事しちゃいな」

    里穂にけしかけられ、渋りながらもLINEでOKの返事を送った。するとすぐに征二からも返事がきた。

    ―じゃあ、近くまで迎えに行くね!

    それを見た里穂が、本気で羨ましそうな顔で言った。

    「ドライブデートなんて楽しそ~」

    その言葉に、ちえみは少しだけ優越感を覚えた。



    快晴となったデート当日の土曜日、待ち合わせは恵比寿駅の東口からすぐの場所だ。

    少し早めに行ったが、征二はすでに到着していた。


    「ごめんね、お待たせ」

    「うん、俺もちょうど今きたとこ」

    そう言って笑う彼は、今までの印象より2割増しくらいカッコよく見えた。

    女性もそうだが男性も、昼が似合うタイプと夜が似合うタイプにわけられる。征二は圧倒的に前者らしい。

    「じゃあ、早速行こうか」

    征二がエンジンをかけて、バックミラーをちらりと確認する。

    今日は鎌倉へ行く約束だ。海を見て、生しらす丼を食べて、鶴岡八幡宮へ行くというベタなコース。

    高速を使って約1時間半。アルコール無しの冷静な状態で二人きりになれるドライブデートは、相手を知るには絶好の機会かもしれない。

    それに、渋谷のスクランブル交差点なんかの、人が列をなすように歩いているのを横目に、車で颯爽と駆け抜けると、なんだか自分が特別な存在になれた気がして高揚感がある。

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