誰もが虚勢を張る街・東京。
だからこそ、自然体でいられことに、真の価値がある。
大手航空会社で役員秘書をしているちえみ（27歳）は、地方出身であることを恥じ、虚勢を張って生きてきた。
偏った価値観にどっぷり浸かっていたちえみだが、ある出会いにより彼女の人生は大きく変わろうとしていた。
ポイントは、目黒に大きな実家がある次男坊
「私、最高の人と結婚して、一発大逆転狙うんだ」
ちえみは、親友の里穂を前に目を輝かせて語った。
ちえみのまわりには東京出身の女性が多く、都心のど真ん中に実家があり、学生時代から華やかな職業の男性たちと付き合っていた子ばかりが揃っている。
彼氏に連れられ、六本木ヒルズでレイトショーを観たり、ちょっと背伸びして西麻布のビルの上層階にある隠れ家的レストランに連れて行ってもらったり、そんなことが当たり前の世界で生きて来た女友達。
一方のちえみはといえば、大型ショッピングモールしかないような地方で育ち、地元の国立大を出て上京してきた。
ちえみは、煌びやかな友人たちと同じステージに立とうと必死だった。
そのために、フットワーク軽いエビージョになり、23時の誘いも喜んで受けた。
最近まで付き合っていたのは、同い年の商社マン。ただの商社マンではなく、目黒に大きな実家を持つ次男坊。それがポイントだった。
ちえみは考えていた。このまま、商社マンの彼と結婚すれば、大逆転ができると。どんなに頑張っても、自分一人で登れるステージには限界がある。あと一歩足りないものを、結婚相手に埋めてもらえば完璧―。
だが、ちえみの目論見はあっけなく敗れることになった。
