靴と東京と私 Vol.9

地方出身者ですが何か?ヒールを脱ぎ捨てた先に出会える、東京で自分らしく生きる道

いつの時代も、靴が女性を素敵な場所へと誘う。

どんな靴を履くのか。そこに女性の今後の人生に対する、強い意思が宿る。

2017年の東京を歩きゆく女たち。

彼女たちは、人生のパートナーとして、どのブランドの靴を選ぶのか。

靴と東京と私。靴なしでは、女の人生は語れない。


【コンバースを履く女】

名前:春香
年齢:29歳
職業:保険会社勤務
住まい:目黒
好きな店:『レストラン ユニック』『鳥しき』『立飲ビストロシン』

自分を守り、偽るためのピンヒール


東京の狭くて四角い空を見上げながら、ふぅっと溜息に似た深呼吸をする。

オフィスのある溜池山王は、昼休みの時間になると急に人口密度が増す。近所の定食屋やレストランはすぐに満席になり、ランチ戦争が繰り広げられる。

—こんな狭いエリアに、いったい何人の人が押し込まれて働いているのだろうか...

昼休みになる度にいつも思う。

鳩時計の鳩のように、12時ちょうどに顔を出し、そして13時には皆オフィスへ(巣へ)静かに戻っていく。全てが機械的で、毎日同じルーティン。

そんな毎日に、どこか違和感を感じるのは私だけなのだろうか?

上京して早7年。憧れの東京生活は、いつの間にか単調な日常生活となっていた。

目黒に住み、仕事も順調だ。東京生活にも慣れ、地元のことを思い出す日も少ない。

でもここ最近、急に東京生活に魅力を感じなくなってきた自分がいる。

連日同じような食事会に、皆必死で“私たち最高よね”とアピールしてくるキラキラ女子会。そして極め付けは猫のひたいほどの狭い家。

—地元だと15万も払えば家族で住めるような家が借りられるのに...

家の扉を開けるたびに、狭い自分の部屋を見て落ち込んでいる。無機質で、効率だけが優先されている東京。ここに、本当の私の幸せはあるのだろうか?

「春香、昼休み終わっちゃうよ。急ごう!」

同僚の奈々実に急かされ走り出そうとするが、つま先のタイトな、きついヒールが足元を締め付ける。

そう言えば、上京してからピンヒールばかり履いているな...そんなことをふと思いつつ、転びそうになりながら足早にオフィスへ戻った。

東京にいる限り、“常に完璧な自分”を装わなければならない。無意識のうちに、ヒール以外履かなくなっていた。

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