2017.02.11
二人の男で Vol.1様々な色眼鏡で見られる、“CA”という職業。開き直った先に出会った男は...?
現在29歳の詩織は上智大学文学部を卒業後、大手航空会社に入りCAという職業に就いた。
昔から海外への興味が強く、特に文学や美術などの芸術鑑賞が好きだった。学生時代は複数のバイトを掛け持ちし、お金を貯めては旅行に明け暮れた。
ヨーロッパやニューヨークの美術館、アフリカや南米の世界遺産を訪れるため、バックパッカーのような一人旅の経験もある。
詩織は同年代の女子たちが好む、買い物やエステツアーの類への興味は、あまり持ち合わせていなかった。
それよりも、知らない街を自分の足で散策したり、聞き慣れない言語を話す外国人の中に紛れ込み、その土地の文化や風土を感じるのが、とにかく楽しかった。
ある程度路線は限られるものの、様々な国を仕事で訪ねることができるCAという職業は、詩織にとって好都合であり、趣味の延長とも言える。
プライベートではあまり社交的なタイプではないが、接客業には不思議とやりがいを感じていて、人の世話をしたり役に立つことも、単純に好きだった。
「しーちゃんは、これまで会ったCAさんとは、ちょっと違う!」
2歳年下の正男は、出会った当初しきりにそう言っていた。
仕方のないことだが、詩織は“CA”という職業によって、他人から様々な色眼鏡で見られることが多い。
昔の人気ドラマの影響で、「玉の輿狙ってそう」「高飛車」などと遊び人のようなイメージを持たれることもあれば、「所詮、ブルーカラーの仕事でしょ?」なんて蔑まれることもある。逆に、必要以上にチヤホヤされることも少なくない。
―たかが、職業なのに......
詩織はそんなフィルターが本当に苦手だった。CAという看板が良くも悪くも重すぎて、転職を考えたことは数回では済まない。
しかし、ある程度の年齢になると、自分が他人から持たれるイメージなど、段々と気にならなくなるものだった。
詩織が「開き直る」という術を身につけ、自分で選んだ好きな仕事を自分のペースで楽しめるようになったのは、つい最近の話だ。
正男と出会ったのもちょうどそんな頃だった。
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