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二人の男で Vol.1

二人の男で:女の本能を狂わせた出会い。結婚に最適な彼がいようとも、抗えないほどに

様々な色眼鏡で見られる、“CA”という職業。開き直った先に出会った男は...?


現在29歳の詩織は上智大学文学部を卒業後、大手航空会社に入りCAという職業に就いた。

昔から海外への興味が強く、特に文学や美術などの芸術鑑賞が好きだった。学生時代は複数のバイトを掛け持ちし、お金を貯めては旅行に明け暮れた。

ヨーロッパやニューヨークの美術館、アフリカや南米の世界遺産を訪れるため、バックパッカーのような一人旅の経験もある。

詩織は同年代の女子たちが好む、買い物やエステツアーの類への興味は、あまり持ち合わせていなかった。

それよりも、知らない街を自分の足で散策したり、聞き慣れない言語を話す外国人の中に紛れ込み、その土地の文化や風土を感じるのが、とにかく楽しかった。

ある程度路線は限られるものの、様々な国を仕事で訪ねることができるCAという職業は、詩織にとって好都合であり、趣味の延長とも言える。

プライベートではあまり社交的なタイプではないが、接客業には不思議とやりがいを感じていて、人の世話をしたり役に立つことも、単純に好きだった。

「しーちゃんは、これまで会ったCAさんとは、ちょっと違う!」

2歳年下の正男は、出会った当初しきりにそう言っていた。


仕方のないことだが、詩織は“CA”という職業によって、他人から様々な色眼鏡で見られることが多い。

昔の人気ドラマの影響で、「玉の輿狙ってそう」「高飛車」などと遊び人のようなイメージを持たれることもあれば、「所詮、ブルーカラーの仕事でしょ?」なんて蔑まれることもある。逆に、必要以上にチヤホヤされることも少なくない。

―たかが、職業なのに......

詩織はそんなフィルターが本当に苦手だった。CAという看板が良くも悪くも重すぎて、転職を考えたことは数回では済まない。

しかし、ある程度の年齢になると、自分が他人から持たれるイメージなど、段々と気にならなくなるものだった。

詩織が「開き直る」という術を身につけ、自分で選んだ好きな仕事を自分のペースで楽しめるようになったのは、つい最近の話だ。

正男と出会ったのもちょうどそんな頃だった。

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二人の男で

愛するか、愛されるか。

東京の賢き女は愛されることを選び、愚かな女は愛を貫くというのは、本当だろうか。

堅実な優しい男と、危険な色香漂う男。

麗しき20代の女にとって、対極にある“二人の男”で揺れ動くのは、もはや宿命と言える。

そんな彼女の苦しみが、貴方には分かるだろうか。

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