今日も一人寂しい帰り道…。私より可愛くない、あの子がモテるのはなぜ！？

メイク濃い目の美和子は、ダブル洗顔ならぬ“トリプル洗顔”していたが…？

ほどなくして、宅配ロッカーを開けると、注文したホットクレンジングジェルが届いていた。時刻は23時。今日は残業で、遅くなってしまった。

美和子はしっかりメイク派。今まではオイルクレンジングを使っており、ジェル状のものでしっかり落ちるのかは少し不安だった。

乾いた手のひらにジェルをとり、顔になじませながらマッサージしていくと、じんわりと温かくなった。かじかんでいた指先も一気に熱を帯びる。

心配していた洗浄力は、大丈夫そうだった。目尻に濃く引いたアイラインも綺麗に落ちている。まつ毛エクステをしている美和子は普段、アイリムーバー、オイルクレンジング、洗顔、と“トリプル洗顔”していたが、これなら1本で済みそうだ。

いつもならばシャワーだけで済ませるが、この日は久しぶりに湯船につかった。少し埃をかぶっていたアロマオイルも数滴垂らす。久しぶりに全身が温まった。

その日は、ベッドに入ると猛烈な眠気に襲われ、すぐに眠りに就いた。

◆

ホットクレンジングジェルを使ったり、アロマバスに入るようにしたり、美和子なりの「温活」を始めて1か月が経った。

スニーカーもムートンブーツも絶対履かないが、「温活」は思いの外気持ち良く、続けられている。

今まであまり気にして来なかったが、温めることを意識すると、体全体がリラックスして心地良い。哲也に言われた「隙」は、こうして作られていくのではないかと密かに期待している。

美人だけどモテない！美和子の悩みは解決するのか？

「美和子、髪切った？何か雰囲気変わったね。」

休憩スペースにいると、哲也が声をかけてきた。ここ最近、お互い仕事が忙しくてランチも別々だったので、会うのは久しぶりだ。

髪は1ミリだって切っていない。いつもと違うテイストの服を着ていたり、メイクを変えたり、何か変わるとすぐに「髪切った？」と聞けばいいと思っている。哲也は、本当に鈍感だ。それでも、雰囲気が変わったのには気付いたので、良しとしよう。

「1ミリも切ってないよ。哲也こそ、髭どうにかすれば？」
「あれ？なんかいつもと違う気がしたんだけど。」

気の置けない、こんな些細なやり取りが嬉しい。今日、哲也の隣にリナはいない。

「今日はリナちゃんいないの？」
「いや、何かお邪魔になるからいいとか言って。何いってんだろ？」

―哲也が鈍感で、本当に良かった…。“タマゴちゃん”も気が利くじゃない。

食べ終わってからも、2人の話は尽きなかった。いつも30分ほどで済んでしまうランチも気付けば1時間ほど経っている。

「来週あたり、久しぶりに飯でも食いに行く？」

哲也の言葉に、美和子はほくそ笑んだ。

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