結婚できない女 Vol.2

結婚できない女:”いい女”を演じるほど結婚は遠のく!29歳、愛を忘れた女の誤算

男が言う「いい女」の真意は。


「里子ちゃんは、彼氏いるの?」

金曜の夜、六本木の『格之進R』で里子は珍しく、外資コンサル相手の食事会に顔を出していた。

しかし智也との結婚を望む里子には、目の前に並ぶ男性陣より、事前予約が必要だというウニの牛肉軍艦のほうがはるかに魅力的だった。


本来、今日は智也と食事に行くはずだった。急に接待が入った、とドタキャンされ、そのことを秘書仲間の絵梨に愚痴ると、「ちょうど1人足りなかったの!」と無理やり食事会に連れてこられたのだ。

「望月さん、残念ながら、里子は彼氏いるんですぅ~。」

望月の向かいに座る絵梨が、里子が答える前にそう言って、ぷるぷるとピンク色に潤った唇を突き出すしぐさをする。

「おっと、それは残念だな。俺、里子ちゃんみたいな奥ゆかしいタイプの子、好みなんだけど。」

里子に穏やかな笑みを向けながらさらりと言う望月に、絵梨は「じゃ、私は無理ですね」と笑い、さらに突拍子もないことを口走った。

「ねぇ里子、この際、望月さんに乗り換えたら?」

その顔は、良い事思いついた!といわんばかりの得意気な様子。帰国子女の絵梨は里子とは正反対のタイプで、思っていることをそのまま口に出してしまうのだ。

「なっ…乗り換えるなんて、そんな。望月さんに失礼だわ。」

すみません、となぜか里子が望月に謝る。それなのに絵梨はまったく意に介さぬ様子。里子の許可も得ぬまま、智也との恋愛事情を勝手にぺらぺら話し始めてしまった。

彼は32歳のイケメン代理店マン、里子の29歳の誕生日にもプロポーズの気配なし。しかも最近、浮気疑惑がある…などをつらつらと並べたて、最後にしたり顔で「そうよね、里子?」と言うのだ。

絵梨に同意を求められ、里子はもはや諦め顔で頷く。ここまで遠慮なく洗いざらい喋られてしまうと、もうどうにでもなれ、という気分だ。

「浮気疑惑?」

望月が、目を丸くして里子に問う。

1か月ほど前、里子は智也の部屋で見知らぬピアスを見つけた。しかし、智也を追及したりせず気づかぬフリをしている。下手に詮索して、智也と揉めたくないのだ。

不安になっても、結婚相手として最後に選んでもらえればそれで良い、と言い聞かせる。

「追及しないなんて、里子ちゃん、いい女だなぁ~。」

望月がしみじみと言うのを遮るように、絵梨が口を開いた。

「…それ、いい女っていうか、都合のいい女だからでしょ?」

わざとらしく目を細め、ぴしゃりと言い放ったのだ。その一言で、皆が一斉に笑ったが、里子はまったく笑えなかった。

ー都合のいい女―

絵梨の言った言葉が、頭の中でぐるぐるまわる。

里子が結婚を意識していることは、智也もわかっているはず。しかし29歳の誕生日にも、智也の口からは結婚の「け」の字すら出なかった。

里子が智也の勝手を許すのは、結婚を視野に入れているからこそ。しかしその思いが、智也に都合よく利用されていると言うのか。

救いを求めるようにふと隣を見ると、望月は皆と一緒に笑うことなく、無言で赤ワインを口に運んでいた。

この記事へのコメント

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No Name
二兎追う者は一兎をも得ず、ですな😃 ハイスペだから2人以外にも女はいるかも知れないけれど、一緒に居ても幸せになれなさそうな男……。
2020/10/06 13:450

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