結婚ゴールの真実 Vol.10

結婚ゴールの真実:「家事は女の仕事」温厚な会計士の意外な一面。我慢ならぬ妻は…

地味に亭主関白な夫と、地味に夫を騙す妻


堰を切ったように美加の口から溢れ出た愚痴を簡単にまとめると、彼女の夫は、ひどく鈍感で、地味に亭主関白な男であるらしい。

まず、悪気はないが、家事を一切しようとしない。

美加は結婚後も大手IT会社のSEとして多忙な仕事を続けているが、そんな事情はお構いなしだ。

厳しく何かを要求するわけではないが、家事は女の仕事であると、心の底から自然と思い込んでいるタイプの男だという。

平日の帰宅時間が美加より早かったとしても、腹を空かせたまま、夜10時でも11時でも、何もせずに待っている。急いで料理したおかずと白飯だけが食卓に並べば、「あれ、お味噌汁と漬物を忘れてるよ?」と、無邪気に促すそうだ。

「先月、私がノロウィルスにかかったときはね、“じゃあ、俺はしばらく外に泊まるね”って、笑顔で近くのビジネスホテルに泊まりに行っちゃったのよ。看病なんて、一切なしに。」

「それは......。旦那さん、天然なのか?」

「そうだと思う。とにかく悪気がないの。だから私も強く言えなくて...。その時は、結局お母さんに看病に来てもらったのよ。旦那が外に泊まってるだなんて言えなくて、出張だって嘘ついちゃった...。」

「旦那も旦那だけど、お前もハッキリ不満を言えばいいじゃないか。」

「まぁ、そうなんだけど。でも......」

ああ、そうだったと、吾郎は昔を思い出した。美加は、「言えない女」だった。


男に浮気されても、貸した金を返して貰えなくても、何も言えないのだ。昔からそうだった。そうして、「今度こそは素敵な人!」であったはずの男は調子に乗り、どんどん嫌な男へと変貌していく。

美加は「ダメンズウォーカー」ではなく、「ダメンズメーカー」とも言えるのだった。

「しかも旦那はね、すごく子供を欲しがるの。私、今の状態で子供なんて絶対に嫌だから、内緒でピル飲んでるんだ。」

「え?旦那は知らないで、子作りに励んでるのか?」

その時だけ、美加は嬉しそうに「ふふふ」と可愛らしい微笑みを見せたが、吾郎は背筋が寒くなった。

地味に亭主関白な夫に、地味に夫を騙す妻。

評判通り、『蕎ノ字』のシメの蕎麦は美味かったが、夫婦の愚痴を聞きながら食べるものではないと、吾郎は少し後悔した。

「何だか、吾郎にたっぷり愚痴ったら、コップが綺麗になった気がするわ!ありがとう!!」

酔っ払った美加は晴れやかな表情で帰って行ったが、吾郎には後味の悪さが残った。

彼女の溜まった汚れが浄化されたのは、きっと一時的であろう。

また少しずつ、夫婦間のズレは膿のような汚れとして溜まっていき、美加は再び「墓場の住人」のような顔に戻るに違いない。

夫婦とは本来、助け合い、支え合うものではないのだろうか。少なくとも、結婚式場の神父はそのような類のセリフを口にしている。

しかし実際は、どちらかに負担を強いたり、騙し合う夫婦がほとんどである。それほど人を消耗させる結婚とは、一体、何のための制度なのか。

吾郎にはやはり、どうしても理解できないのだった。

▶Next:1月15日日曜更新
「幸せは、金では買えない」玉の輿に乗った女の苦悩とは?

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